中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年10月07日
かくして「グルーポン系サイト、冬の時代が来るぞ~」との報道が飛び交い、なにか不安要因が見つかると大々的に喧伝される疑心暗鬼が続いてきたが、その前に中国ネットショッピング世界に共同購入という形式が定着してきたという事実を見過ごすべきではない。
■中国ネット民に定着した共同購入という慣行
「ブレーキを踏んだら死亡」というチキンレースが繰り広げられる中、各社は大々的に広告をうち、出稿元への営業を展開した。その結果、グルーポン系サービス全体の知名度は大きく向上した。今年8月、グルーポン系サイトの売り上げは12億5000万元(約150億円)と史上最高額を更新した(団800市場調べ・新華網)。
また、グルーポン系というプラットフォームが確立した恩恵を受けたのが「蟹券」「月餅券」などの贈答用クーポン。上海ガニと引き替えできるクーポンが贈答品市場に一席を占める新たな商品の定着にグルーポン系サイトは不可欠だったという。中国では映画館の動員数が急増しているが、これも平日のみ使用可能な割引映画クーポンが大量に販売されたことが大きい。
(関連記事:商売の天才・中国人が生み出したミラクルビジネス「蟹券」が面白い―中国)
■「チキンレースの時代」から「冬眠の時代」へ
しかし、昨年から続く金融引き締めの影響で、「赤字垂れ流しでもユーザー数だけ増えていれば、いくらでも金は借りられます!」という局面は終了した。「チキンレースの時代」は終わり、資金の流出を抑え、競争相手が死ぬのを待つ「冬眠の時代」が始まろうとしている。
グルーポン系サイトの総数は7月末には5126サイト、8月末には5610サイト。増加ペースは激減している。また8月だけで300サイトが閉鎖した。閉鎖はしなくとも実質サービスがストップしているサイトも少なくないという。売り上げは史上最高額を更新したとはいえ、大手サイトに集中する傾向が鮮明化している。
■「冬眠の時代」は合従連衡で生き残れ
こうした中、グルーポン系サイトの合従連衡の動きが話題となっている。大手グルーポン系サイト・F団は先日、大手SNSサイト・開心網との提携を発表した。開心網のグルーポン系サイト・開心団購は維持されるが、その運営はF団が行う方式だ。
F団は開心網以外にも、中国IT企業の巨頭・テンセントとも提携している。さらに大手ばかりではなく、ユーザー数の総数では中小だが、北京など大都市スマートフォンユーザー向けに人気が高いVeloとも提携し、「合従連衡」路線を強化している。
たんなる買収合併ではなく、お互いの独自ブランドを維持した上での連携というのが面白い。運営費、営業費の削減が可能なF団の連携戦略が、あるいはこの「冬眠の時代」を乗り切る新たな指針になる可能性があると新華網は評している。
■超淘汰時代はいつ終わる?!
ついに始まった「冬眠の時代」はいつ終わるのだろうか?ラジオ番組「天下財経」に出演したネット専門か・劉星亮氏は最終的に「全国的総合サイトは5サイトにしぼられる」と指摘している(中国広播網)。
現存する5000サイトのうち全国的総合サイトはせいぜい数十ではないかと思うが、それにしても5サイトにまで減少するというのは驚きの予測だ。共同購入という商慣行が広まった以上、もし予測が実現すれば、生き残った5サイトはすさまじい権力を持つことになりそうだ。
もっともグルーポン系サイトの特徴は技術的な参入障壁が低く、かつユーザーの乗り換えが容易な点にあるため、市況が復活すれば中小サイトがまた増えていくような気もするだが。
参照リンク:
共同購入市場の淘汰始まる=連合が「冬越え」の新戦略となるのか(新華網、2011年10月5日、中国語)
共同購入市場に「淘汰効果」の兆し=全国レベルのサイトは来年にも5社に(中国広播網、2011年10月6日、中国語)
グルーポン系サイトの数が気づいたら5126サイトになっていた=バーゲンの国・中国(KINBRICKS NOW、2011年7月10日)
業績不振のグルーポン中国が電撃的リストラ=社員をオフィスに押し込め解雇の交渉(KINBRICKS NOW、2011年8月21日)