2011年10月7日、リベリアのエレン・サーリーフ大統領、リベリアの平和活動家リーマ・ボウイー氏、そしてイエメンの人権活動家タワックル・カルマン氏の女性3人のノーベル平和賞受賞が発表された。
昨年の劉暁波氏に続き、人権活動家、人権派弁護士など「ノーベル平和賞候補の宝庫」中国が10年ぐらいノーベル平和賞を独占するのではと期待する声もあったが、さすがにその偉業達成はならなかったようだ。もっとも昨年のノーベル平和賞受賞者発表後、ノルウェーと中国の外交関係は悪化。自由貿易協定(FTA)交渉が中止されるなど、中国政府は強硬な態度を示した。この点を考えると、ノルウェー・ノーベル賞委員会も中国から選ぶことは難しくなったと言えるかもしれない。
さて、昨年のノーベル平和賞といえば、忘れられないのが中国の生み出したニセ・ノーベル平和賞こと孔子平和賞。1回限りのネタだと確信していたのだが、今年も世界に話題と笑いを振りまいている。
KongZi, Confucius Temple detail of roof, Main Statue / IvanWalsh.com
■孔子平和賞をめぐるごたごた
・9月18日、第2回孔子平和賞開催を発表(新華網)
1発ネタで終わったはずの孔子平和賞、まさかの第2回が発表。
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・9月27日、第2回孔子平和賞中止へ(中国文化部)
発表から9日後、中国文化部が賞の中止と主催者団体の解散を発表。以下2点が問題とされている。まあ、これは建て前で、世界の笑いものになったからというのが原因だろうが。
(1)主催者の「中国郷土芸術協会伝統文化保護部」が「中国郷土芸術協会」に孔子平和賞開催を連絡していなかったこと。
(2)「中国郷土芸術協会伝統文化保護部」という部局名称を、許可なく「文化部中国郷土芸術伝統保護部」と改名したこと。
■孔子「世界」平和賞をめぐるごたごた
今年も笑わせてもらった、ごちそうさまと思ったのも束の間、お笑いネタはもう一発残っていた。孔子平和賞開催発表2日後の21日、孔子世界平和賞なるもう一つのニセ・ノーベル平和賞の開催が発表されていたのだ。
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9月21日、孔子世界平和賞開催を発表(
中国経済網)
ググってみると、そこそこ報道されていたのに海外メディアはノーマーク。まさかニセ・ノーベル平和賞が2つもあるとは思わなかったのではないだろうか。ちなみに第1回孔子平和賞立ち上げの時に参加していた清華大学の羊滌生教授、北京大学の趙振江教授、北京師範大学の周桂鈿教授が参加している。孔子平和賞立ち上げメンバーの分裂劇であった。
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10月6日、孔子世界平和賞中止へ(
新京報)
主催団体の中華社会文化発展基金会が中国文化部ウェブサイトに声明を発表。「孔子世界平和賞は一部の大学教授と話し合いをしていただけ。まだ正式スタートしていないです。上級部局の認可ももらっていないです」とのこと。もっとも羊教授は「平和賞は必要なんだから実現に向けて頑張る」とコメント。まだ心は折れていないようだ。
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孔子平和賞とはなにか?昨年の孔子平和賞をめぐるごたごたについては記事「
世界的ニュースになった学芸会?!孔子平和賞ってなんだったの?」にまとめた。また、ブログ「電羊齋は涙を信じない」のまとめ記事「
孔子平和賞」でも詳細にまとめられている。
簡単にまとめると、2010年10月15日に環球時報が
スイス・チューリヒ州立銀行北京代表処の劉志勤(リウ・ジーチン)主席代表によるコラム「中国は『孔子平和賞』を設立するべきだ」という記事を掲載。「欧米が勝手な理屈でノーベル平和賞を決めるならば中国も平和賞を作っちゃおうぜ」というたわいもない内容だったが、これが盛り上がって、中国文化部管轄の中国郷土芸術協会の一部局、中国郷土芸術協会伝統文化保護部主催で実施されたという経緯。
ブログ「電羊齋は涙を信じない」は、「
「孔子平和賞」は共産党・政府が「民間」団体・「民間」学者を隠れ蓑とし、官製マスコミを使ってでっち上げた一種のキャンペーンでしかない」と指摘するが、私は「
これだけごたごたしているところを見ると、数人の学者さんの暴走なんじゃないの?」と疑っている。
今年の「孔子平和賞」と「孔子世界平和賞」の分裂劇など、まさにごたごたの極地。これを狙ってやっているとしたら、中国当局のお笑いの才はあまりに非凡すぎるように思うが……。