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2011年10月08日
もっともインフラを建設するにも元手が必要だ。地方債発行の自由を許せば各地方ががんがん資金を調達しては返済できなくなるカオスが到来する。実際、1980年代末から1990年代初頭までそうした行為が横行。たんに乱発するだけではなく、権力をかさに利率0%という債権を発行したり給与として支給するなど、ほとんど地方政府発行キャッシュの勢いで乱用した例もあったという(百度百科)。そのため中央政府は1993年に地方債発行を禁じ、中華人民共和国予算法で禁止を明文化した。
2009年、リーマンショック後の金融危機により一部地方政府の財政が悪化。これを補うため地方債が復活することになった。ただし、中央省庁の中国財政部による代理発行という形式がとられたほか、中国全体で年2000億元(約2兆4000億円)という大枠で調達されている。2009年、2010年ともに約2000億元という数字は変わっていない。今年も現在までに1400億元(約1兆6800億円)が調達されている(中国経営報電子版)。
「いやいや、これだけじゃ足りない」ということだったのだろうか、2008年末から急激に利用が広がったのが、いわゆる「地方政府融資プラットフォーム」である。簡単にまとめれば、政府が保有する土地を担保に銀行から資金を調達するという仕組みだが、その残高が激しく積み上がり、しかもその総額を誰も把握できないというカオスが到来。金融不安の一因となった。
(関連記事:「中国経済の爆弾」地方政府融資プラットフォームの残高は175兆円に)
中央政府もついに地方政府融資プラットフォームに対する規制に乗り出したが、たんに禁止したのでは地方政府が干上がってしまう。そこで地方債発行拡大プランが浮上した。中央政府が取り決めた大枠を地方に分配するというやり方ではなく、地方が必要な金額を積み上げる「自主起債」が目玉となる(中国経営報電子版)。地方が必要な金額を積み上げて中央省庁が発行するのか、はたまた地方政府が調達の任務に直接あたるのかまでは、まだ明らかにされていない。
チャイナ・デイリーの報道は、浙江省がその試行地域の一つに選ばれたことを示している。中国経営報電子版によれば、他にも広東省、上海市、深圳市が参加する見通し。調達額は計300億元(約3600億円)に達する見通しだ。
「調達額が把握できない地方政府融資プラットフォームがこれほど不安視されるぐらいなら、地方債発行額が明示される地方債の自主起債をとっと認めておけば良かったのでは?」という考えもあるだろうが、中央政府の慎重さは理解できる。というのも、どうにかして金をひねりださなければならないとなると、「中国版一休さん」が大挙出現して裏技を開発するのが常。地方債についても本当にコントロールできるのか、なんか荒技が登場するのではないかとの不安感(期待感?)もある。