中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年10月09日
それは第一にアップルが世界的な大企業であること、第二に著作権侵害コンテンツに課金システムを与えたことが問題となった。アップストアで提供されている海賊版小説アプリは無料のものもあるが、数十冊セットで数百円という有料版が主流だ。
「アップストアで提供されているのだから正規版だと思っていた」という購入者はもちろん、「がんばれば無料の海賊版も見つかるが面倒だからお金を払おう」という購入者も、お金を払っているという意味ではもう一歩で正規版購入者になってくれる可能性もあるターゲットと言えるだろう。なかなか構築が難しい課金システムを、アップストアが海賊版販売者に与えてしまった問題性は小さなものではない。
裁判では、アップルは「海賊版の責任は販売者が負うべきでプラットフォームを提供しているアップルの責任ではない、正規の著作権者から連絡があれば削除している」と反論することになるだろうが、著作権者としては「いたちごっこの削除合戦を著作権者が手間かけてやんなきゃならないのか」と不満が残るところ。正規の著作権者とアップルに認定され、海賊版アプリが削除されるようになるのは相当な労力が必要だという。
ちょっと興味深いのは、先日、香港の電子雑誌「陽光時務」が中国アップストアから削除されたというニュース。同誌は今年初頭に南方都市報を解雇された著名ジャーナリスト・長平氏を編集長として創刊されたばかり。スタイリッシュなデザインや動画も取り込んだアプリケーションスタイルと、「敏感」な話題に大胆に踏み込む内容で注目されていた(ドイチェ・ヴェレ)。
「著作権侵害の訴えには反応が鈍いのに中国政府に怒られたらすぐに対応するのか?」強硬な政府の態度を考えれば理解できなくもないが、あまりに対照的な反応に米アップルの姿勢を問う声も上がっている。