中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年10月10日
■新世代出稼ぎ農民の教育水準、職種、給与
報告書は
1980年から1994年に生まれた出稼ぎ農民を新世代出稼ぎ農民と定義している。2010年に全国106都市で実施された流動人口動態観測調査データに
よると、出稼ぎ農民全体のうち、新世代出稼ぎ農民が占める比率は47%に達している。
通説のとおり教育水準は高く、非識字者はほぼ消滅。教育を受けた年数
も平均9.8年にまで伸びた。新世代出稼ぎ農民のうち5%は大学卒の学歴を持つという。
また職種についても以前とは変化があり、製造業で働く比率が46.3%と以前より10ポイントも高まっている。記事では指摘されていないが、外食産業や清掃業、建築業から移転したと見られる。失業率が低いのも特徴で、男性の98%、女性の81%が職を持っている。
一方で仕事経験の少なさなどの問題から給与は低い。平均月収は1660元(約1万9220円)。職種ではサービス業従事者の給与が高かったという。以前の出
稼ぎ農民と比べて積極的に消費をするようになったとも言われるが、以前として節約型が多く、出費のほとんどは基本的な支出に費やされている。週6日以上、
1日あたり10時間働くなど、過酷な労働を強いられているケースが多い。
■農村社会保障から離脱し「無保険」となった新世代出稼ぎ農民
また社会保険については農村の社会保険制度に未加入のケースが増えている。その一方で居住地の医療保険制度に加入できているケースはわずか10%と低く、無保険者が大多数だという。
将来についての要望では、76.3%が戸籍所在地に戻るつもりはないと回答した。故郷に戻ってもよいと回答した人のうち、63.4%は地元の都市部で働きたいとの回答。農業に従事してもいいと考えている人の比率は約10%しかないということが明らかとなった。
その一方で「農村戸籍から非農村戸籍への転換」(農転非)に同意するケースは3割を割り込んだ。理由についての説明はないが、農村戸籍を手放せば、「農民向け保障が得られなくなる」だけではなく、「村の土地分配を受ける権利が失われる」ことが大きいのではないか。農村の土地を企業や大型牧場に貸し出すことで莫大な利益を得られるケースもある。また都市戸籍といっても、好きな場所の戸籍が得られるわけではない。内陸部の都市戸籍をもらうぐらいならば、農村戸籍を持っておいたほうが得だという判断ではないか。
■慎重すぎる改革に不満
中国は急激に都市化が進み、都市人口と農村人口の逆転も間近と見られる。しかし、都市と農村ではっきり分けられた戸籍制度、外地人と現地人の差別的な待遇など課題は数多く残っている。対処を誤れば大きな混乱を呼びかねない問題だけに、中国政府はきわめて慎重で改革のペースは鈍い。
一方で、新世代出稼ぎ農民のライフスタイル、そして要求の高まりは政府の動きをはるかに上回る早さで進んでいる。改革ペースの鈍さは新世代出稼ぎ農民の不満につながり、大胆な改革を求める圧力へとなっている。