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学校に行かない子どもたち=「私塾」で学ぶという新たな選択肢―政治学で読む中国

2011年10月10日

■中国の「私塾」と教育制度■

環球時報』に「日媒:中国在家读书的孩子日益增多」(日本メディア:家で勉強する子どもが増える中国)という記事がありました。


■1.『産経新聞』記事

この記事は『産経新聞』の「学校に行かない子供たち 中国」を翻訳したものです。都合の悪い部分が意図的に省略されることも多い環球時報の翻訳記事ですが、今回はほぼ正確に訳されています。


教室 / sabamiso


中国も豊かになるにつれ、家庭条件が恵まれた者は、詰め込み型の学校教育に疑問を持つ親の方針により、自宅又は私塾で学ぶ者が増えてきた。

例えば広東省に「六月小学堂」という私塾ができたが、この設立者は良い学校を求め5度も転居した後、結局納得できるところが見つからず、自分で学校をつくってしまった。まさに「現代の孟母」のような人だ。

アメリカでは、120万もの子どもが在宅教育を受けており、私塾を「自由」の象徴のように吹聴する傾向があるが、中国の教育関係者は「子供の成長過程において学校の役割は代え難いものある」としてこうした動きに否定的だ。

私塾礼賛は結局のところ、わがままし放題の「小皇帝」を生んだ親の甘やかしと変わらないのではないか。

*当記事はブログ「政治学に関係するものらしきも」の許可を得て転載したものです。


■2.軟弱(?)な子供たち


こうした小ネタでも中国に対して否定的な見解を見競るところが、いかにも『産経新聞』という印象です。実際、一人っ子世代は昔と比べて我慢がきかないと言われています。例えば、かつては当たり前だった10数人1部屋の大学寮での共同生活に耐え切れず、学校近くに自分の部屋を借りる学生が増えているそうです。

まあ、大学寮の共同生活は私でも耐えきれない状態なので(私の留学した大学では、留学生は3人部屋)、むしろ元々が異常だったのではないかと思いますが、かつての苦労を知っているエリートからすれば、「何と軟弱な」と思うのでしょう。


■3.中国の教育について

産経の記事には、「子供の成長過程において学校の役割は代え難いものがある。学校では競争、協力を体験させられる」との中国教育関係者の否定的なコメントが掲載されています。こう思うのは無理もないでしょう。中国の競争は激烈です。

一流大学に入るために良い高校に入らなければならない、良い高校に入るためには良い中学にならない、そして良い中学に入るためには良い小学に入らなければならない。かくして受験戦争は低年齢化していきます。日本でも同じような傾向はありますが、中国では詰め込み型暗記が重視されるので、幼い頃からのスパルタ教育ぶりはより徹底しているようです。

落ちこぼれのための敗者復活のルートがないという点でも日本と共通しています。お金持ちは子どもを「海外留学」させてごまかすという手段があるのも一緒です(海外留学そのものを否定するつもりはありませんが、自国の大学に入れなかったために留学するという人は問題でしょう)

そうした現状から考えると、「私塾」とやらの独自のカリキュラムで、激しい競争で子どもたちを鍛える公教育に対抗できるはずがないと教育関係者が考えるのは当然でしょう。果たして「私塾」はこのまま増え続けていくのでしょうか、それとも公教育の底力に敗北するのでしょうか。


■暗記教育は本当に悪いのか?

さて中国の暗記型教育の話がでたので付け加えておきますと、近年、日本でも暗記重視の方針が批判されるようになり、考える力を育むことが大事だと言われています。ですが、本当にそうだろうかと疑問に思います。

教育でも何でも、最初は真似ることが大事です。先人が考え、残してくれたことを学ぶことが大事なのです。まずはしっかりと真似をする。その後に初めて新しいことを考え、付け加えることができるのではないでしょうか。必死に暗記することで先人を真似られること。それこそが後の世に生まれた者の強みであり、そして先人に対する尊敬でもあると考えます。

*当記事はブログ「政治学に関係するものらしきも」の許可を得て転載したものです。


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