■ビルマと中国の間に何があったのだろうか?■ビルマのテイン・セイン新政権が、「中国向けミトソン巨大発電ダム建設中止」という、驚くべき発表を9月末に行った。それから10日ほどたつが、いまだその余震は続いている。
ビルマ大統領の驚いたメッセージ(チェンマイUpdate、2011年10月3日)中国は、もちろん怒るだろうが、意表をつかれたのか、国慶節や革命100年行事で忙しいからか、公式のクレームの声はまだ聞かれない。
この発表は、改革派のテイン・セイン大統領の大きな賭けになるのかもしれない。つまり、中国という強い札を場に捨てて、より広いメリットを狙っているように見える。
狙いは、一般国民、ダム用地のあるカチン族とその軍隊、スーチー派、西側諸国、そしてアセアンである。改革というのは、血を流しても犠牲者を出しても遂行することだから、敵対しそうなのは、中国と、副大統領一派の守旧強硬派である。テイン・セインの期待が外れた場合は、政権の命取りになりかねない。
*当記事は10月10日付ブログ「チェンマイUpdate」の許可を得て転載したものです。
この決定は、オバマ米大統領はじめ西側から歓迎の声が上がっている。テイン・セイン政権の狙いは、中国という現在頼りになる強い札を捨てても、西側世論やアセアンの支持を得、なおかつ次のアセアン議長国の席を得た上で、西側の経済制裁を取り払ってもらうことだろう。その過程で、必要なら政治犯2000人釈放の切り札を切ってくるかもしれない。
2011/10/11追記:
当記事は10月10日に執筆されたものです。その後、政治犯釈放に関する大きな報道がありました。
asahi.com(朝日新聞社):ミャンマー、6300人の受刑者釈放へ(asahi.com、2011年10月11日)
国営テレビは11日午後1時(日本時間同3時半)からのニュースで、受刑中の6359人が大統領によって恩赦を与えられ、12日以降、順次釈放されると報じた。
ミャンマー:制裁緩和狙い、政治囚を釈放か 「明日までに」報道 (毎日新聞、2011年10月11日)
ミャンマー国営放送は11日、政府が憲法に基づいて9月上旬に発足させた「国家人権委員会」がテインセイン大統領に対し、「良心の囚人」の釈放を求める書簡を送付したと報じた。
そうは言っても、ビルマの新政権と北京の間に何があったのだろうか?ビルマ政府が、中国の援助、そのやり方に満足していたのなら、前触れなしにこういった発表をやっただろうか。中国のビルマをお得意さんとするやり方に嫌気がさしていたのだろうか。以前お伝えした、中国向けガス・パイプラインの建設中止を求める声も国内からあがっている。
ビルマのパイプラインは中国のため(チェンマイUpdate、2011年9月9日)ビルマ・中国関係の行方から目が離せなくなってきた。
関連リンク:
ミャンマー政治犯ら釈放へ 民主化進展、制裁解除も(47NEWS、2011年10月10日)習中国副主席、ミャンマー外相と会談 ダム建設中断で(共同・MSN産経、2011年10月10日)ミャンマー:ダム建設中断、中国企業反発 「環境負荷小さい」 (毎日新聞、2011年10月9日)ミャンマーは中国を警戒か(日刊 アジアのエネルギー最前線、2011年10月3日)*当記事は10月10日付ブログ「チェンマイUpdate」の許可を得て転載したものです。