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2011年10月12日
■中国国策アニメ振興の歴史
中国初のアニメ映画は1926年の「大閙画室」。以来80年以上の歴史があるが、本当の意味でアニメ産業の成長が始まったのは2004年から。その歴史はまだ10年に満たない。2004年に国家ラジオテレビ映画総局は「中国の映画・テレビ・アニメ産業の発展に関する若干の意見」を公布した。アニメ産業振興を行政が大々的に推進する初の事例となった。
2008年には中国政府が700万元(約8400万円)を投じて、国産オリジナルアニメ・マンガ創作を支援。2010年4月には中国文化部、財政部など9部局は合同で「文化産業の振興と発展のための金融支援に関する通知」を公布し、さらに同年12月には文化部と中国保険監督管理委員会が合同で「保険業による文化産業発展支援に関する通知」も公布された。
国家の強い支援の下、アニメ・漫画産業は発展を続けた。国家ラジオテレビ映画総局の統計によると、2010年に制作されたテレビアニメは385タイトル、22万529分。日本を抜いて世界一となった。
(参照リンク:アニメ!アニメ!ビズ。日本の2010年実績は195タイトル、テレビ放映制作分数は8万9586分)
制作されたアニメは時間ベースで、2004年の約2万分から2010年には約22万分と6年間で11倍の伸びを示している。その中で「喜羊羊と灰太狼」「十二生肖総動員」「秦時明月」などのヒット作も生まれている。
今年5月発表の報告書「中国アニメ・マンガ産業発展報告2011」によれば、「国産テレビアニメ発行許可証」と取得したアニメプロダクションの数は、2005年の35社から2010年には200社にまで増加した。動画産業の核心製品直接生産額は2005年の20億元(約240億円)弱から2010年には80億元(約960億円)を突破するにいたった。
しかし、生産額2000億ドル(約15兆3000億円)超を誇る米国のアニメ・マンガ産業、世界シェアの65%を握る日本と比較すれば、上記数字は喜ぶに足らない。
■国策振興という病
国策によって生産量は増えた。だが、質が向上していないので、ヒット作が少ない。だから、「量より質」に移行せよ、という話で終わるわけだが、実は「国策振興」そのものに高品質の作品を生み出せない要因が隠されている。
記事「「秒速5センチメートル」のパクリアニメが文芸賞を受賞=低品質盗作が量産される業界構造とは?」でもとりあげたことだが、国の手厚い保護が裏目となって、アニメ作品を作る目的が高品質の作品を作ってもうけることではなく、国から補助金をせしめることに変わってしまっているのだ。
7月28日付時代週報によると、3Dアニメを100分作れば10万元(120万円)、CCTVで放送されれば1分あたり500元(約6000円)、制作会社立ち上げの初期費用は政府持ち……などなど補助金支給の細かい規定が存在する。その基準に合わせることが目的となってしまっているという。
いや、それだけではない。アニメ制作基地を作るためという名目ならば、国の認可も通りやすく、銀行の融資も受けやすい。そのため地方政府は大々的にアニメ制作基地作りに乗り出していると、評論家の曹景行氏は指摘する(中国広播網)。
まあ、典型的な産業保護の弊害症状を示している。果たして中国はこの病を癒し、健全な発展へと舵を戻すことができるのだろうか?