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『ドラゴン&タイガー賞大賞はチベット人監督作品-永野監督は特別賞受賞』
「第30回バンクーバー国際映画祭」で10月6日、アジア部門の新人監督作品に贈られる「ドラゴン&タイガー賞」授賞式が行われ、チベット人のSonthar Gyal監督作品「The Sun-Beaten Path」が大賞を受賞、永野義弘監督の「Recreation」とフィリピン人のEduardo RoyJr.監督の「Baby Factory」が特別賞を受賞した。
大賞を受賞した「The Sun-Beaten Path」はチベット人の主人公が、罪と苦悩を抱えながら旅を続け、精神的な救いを見いだすロードムービー。審査員のひとりSimon Fieldさんは「映画としての質が素晴らしく、たった一つの顔と場所から、感情の入り組んだ感動的な話を伝える能力を高く評価した。個性あるキャラクター設定とチベット文化の的確な引用にも感心した。新しい民族映画の力強い声を伝えている」と受賞の理由を話す。
Sonthar Gyal監督は「これは救済の物語。チベットを舞台にしているが全ての人に当てはまり共感してもらえると思う。25日間で撮った映画がこのような大きな賞をもらい驚くとともに感謝している」と話す。(以下略)
*チベット人監督Sonthar Gyal。
実はこの映画、日本でも9月に「アジアフォーカス・福岡国際映画祭2011」で何度か上映されていた。このサイトから「あらすじ」を紹介する。
まもなく花婿になるニマと彼の兄は、帰宅する母を迎えに四つ辻へと向かった。彼らの母親は街にいる娘を訪ねた帰りだった。Gabeはバイクの後部座席に母親を乗せて、ニマは小型トラクターでその後に続く。
ここでアクシデントが。不幸にも母親の帯が落ちて、バイクの後輪に絡まってしまったのだ。Gabeが止める間もなく、母親はバイクから落ちてしまう。バイクは土ぼこりとニマを残して走り過ぎる。まだ運転が未熟なニマはバイクから落ちた母親をトラクターではね、死なせてしまう。
この悲劇によりニマは悲しみと自責の念に深くとらわれる。彼は自分自身を許せなかった。警察に自分を有罪にしてもらおうとするが、警察は母親の死は事故だと判断する。深い喪失と悲しみ、そして母親の血の混じった一握りの土とともに、ニマは故郷と恋人を後に残し、ラサに向かって巡礼の旅に出る。
長く苦しい旅…時も距離も献身的な祈りも彼の苦悶を取り去ることはできなかった。どうしようもない状況の中で、彼は家路につこうとするが、故郷への道半ばにして車を降りてしまう。そして出会ったのが、娘の結婚式に出た後、残された人生への期待をなくし、空虚さととまどいを感じている一人の老人だった。
老人は、奇妙な行動をとる若者に興味を持ち、彼にかかってきた電話で彼の悲しみの原因を知る。そして、この若い男について行こうと決心をする。2人は広大なゴビ砂漠を一歩一歩進んでゆく。彼らの長い旅路で、老人の辛抱強く親切な諭しと、分別ある言葉は若者の態度を徐々に変えてゆく。老人と別れた彼が見つけたものは事実と向き合う勇気を持つ自分自身の姿だった。