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2011年10月13日
また、「中部百強県」に入っている河南省信陽市固始県も、人口こそ170万人と立派ですが、県財政は収入4.3億元(約51億8000万円)、支
出25億元(約301億円)というありさま。中央政府の財政支援がなければ公務員の給料も払えない状態で、発展しているなどとてもとてもという状態だと
か。
■2:ランキングを作った「中郡所」って何者?
こんないい加減なランキングを作った中郡県域経済研究所とは何者なんだというのが気になるところですが、「研究所」とは名ばかりで1998年に設立された資本金10万元(約120万円)の会社でした。
実は、国家統計局が1991年から「全国県市社会経済総合指数前百100評比」(全国県・市社会経済総合指数トップ100比較)というランキングを制定していましたが、2007年に廃止されました。中郡県域経済研究所は国家統計局のランキングを受け継いだかのように誤解を与えるものだと、新華網は批判しています。
同研究所に対してランキング算出の根拠を求めたところ、統計数字の機密性を理由に拒否されたとのこと。上述の固始県統計局職員も同研究所のランキングに使われている指標や書き方から見て素人っぽいとコメントしています。
■3:ランキング作りは金になる
さて、怪しげな会社が作ったランキングだということはわかったのですが、中郡県域経済研究所の目的はなんでしょうか。一言で言ってしまえば、金目当てです。固始県統計局幹部によると、同研究所は固始県が百強県に入ったと連絡してくる一方で、『県域経済年鑑』という中郡県域経済研究所発行の史料集(1冊380元、約4580円)を数十冊購入するよう求めてくるそうです。
日本でも一昔前に流行っていましたが、名士録に名前を記載してやるから寄付金をよこせという手口ですね。あるいは総会屋発行の業界誌手法といいますか。詐欺的手法で一儲けしてやろうという輩はどこにでもいるものです。
■みんな貧困県になりたい(Chinanews付記)
最近、貧困県をめぐる真逆のお話がありましたので、紹介します。10月3日付聯合早報は、「貧困県」の定義が改めて問い直されていると報じています。中国の貧困県は1986年に258県が認定され、1993年には592県にまで増えました。その後、中国経済は奇跡的な成長を遂げているわけですが、貧困県の数は1つも減っていないのです。
経済成長の光は貧困県を照らさなかった……というだけではなく。貧困県認定をゲットすれば、中央政府の補助金がゲットできたりと美味しい有利な点が多いため、どの県も「貧困」の肩書きを手放さないのだとか。とすると、あるいは「貧困県」でありながら「百強県」でもあるという自治体もあるかもしれません。
*当記事はブログ「政治学に関係するものらしきもの」の許可を得て転載したものです。