■恐怖の「試してみよう」■
ロシアの工場で仕事をしていて、パパは困ることがあります。それは、設備に不具合があったとき、ロシア人保全メンバーたちは後のことを一切考えずに機械のあっちこっちをいじってしまうことです。
故障の原因がなかなかわからない場合は、パパは日本に電話をして相談をします。ところが、ロシア人保全たちはいてもたってもいられないようで、
「とりあえず試してみよう!」と、パパが目を離したスキにいろいろいじってしまう。
Wrenches / geoffegパパが電話を切ってアドバイス通りにやってみようとすると、状況がすでに変わってしまっている……。しかも、何をどう変えたかいちいちメモをとらないから、もとに戻せないこともあります。例えば、残り一個しかなかったモーターをお得意の「試してみよう」で勝手にばらしてしまい、パパたちを困らせてしまった、ということもついこの前ありました。
「この『試してみよう』(давайте попробуем!)が一番こわいんだよ」
と家に帰ってからもパパは工場のことが気になってしようがない様子。
「『何かあったらどうしよう』じゃなくて『何かあったらそこから考えればいい』と思っているみたいだね」
と他の日本人も苦笑い。
*当記事はブログ「ロシア駐在日記」の許可を得て転載したものです。
まさにその通りです。たまたま私たちのワーカーたちは若くて経験不足だから……ということもあるのかもしれません。しかし、何となく多くのロシア人に共通している特徴でもあると、私は思います。地道な積み重ねよりも一発勝負といった感じです。そういう「冒険」と「勢い」が必要な場合もありますけれども、少なくとも機械を扱う上では困ることの方が多いようです。
■格闘技でも同じだとパパ
そういえば、パパは格闘技の経験からも同じことを言っていました。
(*タチアナさんの日本人の旦那さんはロシアの格闘技・サンボの選手でした。)
「試合が始まるとロシア人たちはものすごい勢いで攻めてくる。でも、最初の数分さえこらえることができれば、もうこっちのもんだ。一気に力を出し切ってしまうロシア人たちは試合の半ばぐらいからバテてしまう。だから長期戦に持ち込めば持ち込むほど日本人の方が有利だ。」
『ロシアとサンボ -国家権力に魅入られた格闘技秘史-』和良コウイチこの戦い方は何となくうちの保全の仕事の仕方に似ていると思います。後々のことを考えないで勢いよく進んでいって、気がついたらわけわからない状態になっている。こうなったら申し訳なさそうな顔をしながらも日本人に任せてしまう。ま、でも、私たちのワーカーたちはまだ若いし、仕事も熱心だから、パパは教えがいがあるようです。
「最近やり方がだいぶわかってきたみたいだよ」と修理がうまくいったときパパはとても満足そうな顔をしています。
*当記事はブログ「ロシア駐在日記」の許可を得て転載したものです。