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【タイ大洪水】自然災害か人災か?ダム貯水管理体制への疑問(ucci-h)

2011年10月14日

■タイの歴史的な洪水は、自然災害だったのだろうか?■

アユタヤのロジャナ工業団地(198工場、従業員9万人)、サハ・ラタナ・ナコン工業団地(43工場、14700人)を水浸しにした洪水も、チェンマイのナイトバザールを水浸しにしたのも(こちらは小規模だったが)、いずれもダムの放水が絡んでいる。

アユタヤには、なお3つの工業団地が危機にあり、さらにバンコクの北部パトゥム・タニには227工場、従業員12万人を抱えるナバナコーン大工業団地が控えている。

プミポン・ダム下流のナコン・サワンの町を水没させた水は、さらにアユタヤに向かっているという。そして、その下流には首都バンコクがある。政府・自治体の懸命の堤防作りが続いているが、なお予断を許さない状況だ。


■ダム放流は止めれないのか?

今回の洪水騒ぎを見て、一番腑に落ちないのは水浸しになるのが分かっていてのダムの放流である。

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*プミポン・ダム。写真はバンコクポストの報道。

巨大ダム、プミポン・ダムからの放水量は中途半端ではない。今も80億トンの水がアユタヤに向かっていると、インラック首相は言っている(この数字が本当なら、琵琶湖の半分の水を貯めているプミポン・ダムが、その半分をぶちまけたようなものだ)。

アユタヤの日本企業の工業団地も水没(チェンマイUpdate、2011年10月6日)


*当記事はブログ「チェンマイUpdate」の許可を得て転載したものです。


プミポン・ダムは、一日あたり1億トンを放水しているというから、1日流し続けたとして、1秒あたり1150トンの水を放流していることになる。あくまで推定数字だが……。凄い量の水である。


■「この洪水は自然災害か、人災か」


10月13日のバンコク・ポスト紙には、「この洪水は自然災害か、人災か」という疑問で、スミス前気象局局長へのインタビュー記事を載せている。それによると、今回の異常な洪水は、自然災害と言うより、水の管理の不足による面が強いとスミス氏は見ている。

すでに6月からの降雨により、ダムにどのくらいの水が溜まっていくか予測できたはずだ。

ダムに関わる灌漑局と「EGAT」(タイ発電公社)は、乾季に水が不足するのを怖れて、水を溜め込んだ(実際、昨年の乾季は異常渇水に出くわした)。

そして、雨季の終わりの今になって、ダムはいずこも満杯になり、どこも同時に放水するはめになり、すでに雨で水の多いタイ中央平原を水没させている。すでに上流では雨は降っていないのだから、今は一刻も早く3つのダム(プミポン、シリキット、パサック・ジョラシット)の放流を止めるべきだ。

またバンコク周りの川から海への流水を早めるべきだ。気象局、灌漑局、EGAT3者の協力がなされれば防げた面が多い。

ダム銀座の日本でも、上流ダムの放流で川の氾濫がひどくなったというケースがある。ダム管理者は、「あるラインを超えたら放水すべしとの規則どおりにやっている」との言い訳が多い。今後の気象状況を見ながら、早めに少しずつ放水するという例が少し出てきたが、柔軟な対応が必要なのだろう。
(関連リンク:「ダムによる洪水調節の仕組み」弥栄ダム管理所ウェブサイト)


「タイも、6月の雨季の初めから少しずつ流しておけば、こんなひどい事態にはならなかったろうに……」と見るのは、素人考えだろうか?

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関連リンク:
山場の週末迎えるバンコク:「緊迫」と「平静」が混在(NNA.ASIA、2011年10月14日)

洪水から首都守れ、タイが運河突貫工事(日本経済新聞、2011年10月14日)

プミポンダム、放水量減少へ -タイ通(タイランド通信、2011年10月13日)

*当記事はブログ「チェンマイUpdate」の許可を得て転載したものです。


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