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「文化体制改革」が意味するものとは?6中全会を考える―中国

2011年10月16日

2011年10月15日、北京市で第17期中国共産党中央委員会第6回総会(6中全会)が開幕した。来年の党大会前最後の総会となる。会期は4日間、「文化体制改革」が主要テーマとなった。

中央委員会総会で「文化」が主要テーマとされるのは、社会主義精神文明建設を呼びかけた第14期6中全会以来のこと、実に15年ぶりとなる。なぜ今、文化体制改革なのか。私も含め、戸惑った人は多い。というわけで、人の教えを請おうと日本メディアの記事をまとめて読んでみた。

日本主要メディアの6中全会報道
経済の次は「文化強国」建設へ 中国、6中全会始まる(アサヒドットコム、2011年10月16日)
経済の次は「文化強国」建設へ 中国、6中全会始まる(朝日新聞デジタル、2011年10月16日、有料)
経済大国・中国、文化で立ち遅れと危機感あらわ(読売オンライン、2011年10月15日)
中国:6中全会開幕 メディアの管理策協議(毎日新聞、2011年10月16日)
15日から6中総会 デモ波及対抗、「文化」議題(MSN産経、2011年10月14日)
6中全会が開幕 共産党、社会管理の強化へ「文化を指導」 (日本経済新聞、2011年10月15日)
中国 文化強国目指す 六中全会開幕(東京新聞、2011年10月16日)
中国文化の世界浸透狙う=西側に対抗、ソフトパワー強化-6中総会(時事通信、2011年10月15日)
中国が6中総会を開催 文化振興で国際影響力拡大(共同通信、2011年10月15日)

上記記事でとりあげられている論点を乱暴にまとめるならば、以下3点に要約できよう。


人民日报 / jjgod



(1)欧米の思想流入への警戒、中国のソフトパワー向上(朝日、読売、産経、東京、時事、共同
(2)メディア及びネットの管理強化(朝日、毎日、産経、日経、東京)
(3)モラルの改善(日経、東京)

(1)は中国官製メディアが表向き報じていること、(2)は「本音はこういうことでしょ」とみんなが勘ぐっている話、(3)はさらに胡錦濤の気持ちを考えてみたという読み方だろうか。


■政争の対立図式を浮き彫りにするための「文化体制改革」テーマ

今さらソフトパワー向上やらメディア管理を中央委員会総会の議題にするのかな……と腑に落ちなかったところ、すばらしい解説があった。アジア経済研究所研究員の佐々木智弘さんのブログエントリー「6中全会の真の意義が見えてきた」がそれだ。

15日付人民日報に掲載された任仲平「文化強国的"中国道路"」から「文化体制改革」の含意を読み解いている。

任仲平の文章から垣間見られる政治的意図は大きく2つ。1つは中国共産党の一党支配を正当化するための手段として、昨今中華民族の復興という合い言葉を掲げているが、その手段として文化を利用しようということだ。

(…)そして、もう1つの政治的な意図は、共産党が複雑化する社会とどう向かい合っていくか、その対応を模索しようということだ。その際、複雑化した社会が最も体言化されている新しい文化にどう対応していくかということが6中全会の議題である。(…)6中全会の最も重要なメッセージはこの「文化十大関係」だ。

(…)(「文化十大関係」の中で)最も重要な事項は、2番目の「"2種類の属性(イデオロギーの属性と商品経済の属性)"と"2つの効益(社会効益と経済効益)"の関係」だ。「イデオロギー」と「商品経済」という言葉は今ではほとんど使われない、1980年代の改革・開放初期の言葉で、改革・開放を進めるかどうかで党内が対立したころも、対立項として出てきた言葉だ。おおざっぱに言えば、イデオロギーと効益のどちらを重視するのかという、党内で改革の進め方をめぐって、対立が存在することを示唆している。

(…)胡錦濤政権としては、「左」、すなわち保守的な勢力を抑え込む方向に持っていきたいわけだ。そのために、何と何が対立する問題であるかを明らかにすることは意味がある。

佐々木さんの読みでは、(1)中華文明の喧伝を支配の正統性を強化する目的に据えたい、(2)政局政争目的の2点だという。(2)は本サイトでもたびたび扱ってきた「薄熙来対汪洋」「左派対右派」「イデオロギー対経済」「再分配対経済成長」といったテーマをめぐって争われてきた政争の延長戦となる。

6中全会の主要テーマは、来年の党大会をひかえて左派サイドとの対立軸を明確にするべく胡錦濤サイドが仕組んだものという分析には納得させられた。


■出版改革、機関紙改革への影響は?

さて、大枠は佐々木さんの分析通りだったとしても、「文化体制改革」という建前が推し進める改革も決して見過ごせない影響を持っている。

記事「「公的出版機関の企業化」=新たな出版改革でゴシップ紙大増殖か」でとりあげた、民間企業の書籍コード取得要件緩和、人民日報など一部をのぞいて機関紙をのきなみ民営化という大改革が6中全会で一気に加速、実現する可能性もある。

また、すでに十分厳しいネット規制に関しても、なにか重大な方針が打ち出され、今までの「おもてだった発表はないが、静かに管理を強化する」方針から、明確な指示や文書が登場する可能性もあるのではないか。6中全会閉幕後にこの点を確認したい。


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