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バンコクに洪水が迫る中、最低賃金引き上げ政策の最終案が決定―タイ(ucci-h)

2011年10月20日

■洪水がバンコクに迫る中、最低賃金最終案決まる■

タイの半世紀に一度という大洪水で、工業団地の工場が水没した多くの企業は、来年からと予想される最低賃金の引き上げを、追い討ちをかけられる思いで見ていよう。

10月17日(月)の政府、使用者、労働者3者からなる「中央賃金委員会」において、最低賃金は決定される予定だったが、使用者側は、1万以上の工場(数十万 人の労働者)に被害を及ぼした今般の洪水から立ち直るために、新しい最低賃金の決定を6ヶ月間先に伸ばすよう、前日には要請していた。


New 2 Thai Baht coin in Thailand / arjin j



■2つの案


ここまで、最低賃金の引き上げには2つの案が挙がっていた。ひとつは、政府、労働者側からのもので、来年1月より、まず全国で40%引き上げること。バンコク(現行215バーツ、約536円)など現在の水準の高い7つの県では、これにより、1日300バーツ(約751円)に届く(バンコクは39.5%の引き上げ)。

届 かないその他の地方は、2013年1月に再度引き上げて、300バーツに届かせる。300バーツ(約751円)へは、53%~89%の引き上げとなるので、2回に分けるようだ。最低の北部のパヤオ(現行159バーツ、約398円)などは、300バーツへは89%の引き上げとなるので、1年目 223バーツへ(+40%、約558円)、2年目300バーツへ(+34.5%、約751円)となるようだ。

前回、2年で+40%、4年かけて全国が300バーツ(約751円)になる案が有力と紹介したが、どうやら、労働側の圧力で、この期間は1~2年に縮められたようだ。労働者側は、「洪水からの回復に労働者も力を入れるため」と言って、来年1月からの全国一斉の300バーツを要求している。

使用者側の案が第2の案だが、これは4年かけて300バーツ(約751円)に持っ て行こうという漸増案。こちらは政府・労働側に押されそうだ。


■決定した最終案

そして、10月17日月曜日、ちょうど北からの洪水が、バンコクの北側にあるタイ最大のパトゥム・タニのナワ・ナコン工業団地を飲み込んだ日に、中央賃金委員会の決定がなされた。

*当記事はブログ「チェンマイUpdate」の許可を得て転載したものです。


政府・労働側の案の採用日を、来年1月から4月に3ヶ月伸ばして、2011年4月より全国で+40%、2013年(月は示されず)からはすべて300バーツ(約751円)にという案が採用された。1日300バーツは、2015年いっぱいまで有効とするという。この案が、インラックの閣議に送られる。


■噴出する企業からの不満

中小企業30万社の賃上げショックを緩和するために、財務大臣は、現在の最低賃金と300バーツ(約751円)との差額の1.5倍を減税(税額控除?)の対象にするというが、そのインパクトはわからない。タイ工業連盟では、洪水の被害の広がりから、なお実施時期を伸ばすことを働きかけて行くようだ。

使用者側からは、付加価値税を7%から3%に下げるとか、企業の社会保障基金への納付額を減じるなどの要望が出たようだが、政府からは聞いておくということにされたようである。

タイ新政権の最低賃金引き上げは、漸増とはならず、1~2年の間に40~89%の引き上げとなる。一時に40%というのは、大きな賃上げ率だ。企業が全部背負い込むのか、国が税金でどの程度助けるのかまだはっきりしないが、洪水被害と合わせ、進出外資企業には大きな負担と感じられよう。

また、地域格差を無視した一律300バーツ(約751円)は、地方経済の雇用機会をいっそう減らさないか心配される。しかし、しかしである。そのまま数字のようなショックにはならないのがタイランド。そのお話は、また別に。

続編:
インフレ高騰、雇用機会の減少=最低賃金引き上げで懸念される副作用―タイ(ucci-h)(2011年10月21日)

募金情報:

タイ洪水被害への義援金・募金受付まとめ(メモノメモ)

*当記事は
ブログ「チェンマイUpdate」の許可を得て転載したものです。





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