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2011年10月24日
タイの中心部には、この雨季には10月半ばまでに、およそ200億㎥の雨が降ったり、流れ込んだりしてきた。
(*この数字は、昨日の報道で伝えられたバンコクに8億㎥の水が押し寄せてきているという数字を含むものとなるか。)
政府はここまで80億㎥の水を海に流したので、あと100億㎥ほどの水を処理しなければならない。
(*100億㎥といえば、琵琶湖の3分の一強の水をすでに海に流しており、またこれからバンコクまで来ることになる。)
バンコクの洪水の危機はピークを過ぎたわけではない。ナコン・サワンに39億㎥、アユタヤに40億㎥、その他バンコクの北隣パトゥム・タニ等も合わせて、100億㎥の水を排除せねばならない。
これらの過去経験したことのない大量の水は、どどっと来るのではなく、徐々にバンコクへやってくる。地域によっては、地形によるが、浅く浸水するところも、深くなるところも、水が来ないところもある。
■政府の洪水対策失敗、2つの要因
後講釈だが、政府の洪水マネジメントはうまくいかなかった。その要因は2つある。
一つ目は、プミポン、シリキットの大きなダムに、水を貯め過ぎたことだ。灌漑局は、6月に早くも水位が上がったのに、あまり水を流さなかった。雨季米の収穫時(12~1月)と、乾季の水枯れに備えたのだ。その後の大雨により、放流を余儀なくされた。
二つ目は、雨季が例年より1.5ヶ月早くやってきたことだ。また今年の雨季が長期間続いていることも大きい。ほとんど毎日のように各地で同時に降り、田畑やダムに水を溜めていった。この雨季の雨量は例年の30~45%多い量となった。
二つ目の失敗について言えば、なお大量の雨が降ると予測できず、ダムから大量に流れてきた水をナコンサワンから下流のチャイ・ナートに留めた後、西のスパンブリ方面に流さず、東のチャオプラヤ川からシンブリー、アユタヤ方面に流してしまったことだ。スパンブリは今でも乾いている。
■運河を利用し、水を海に流すことが先決
過ぎ去ったことを言っても、今はしかたない。今やるべきことは、バンコクの東にいくつかの運河を使って水を流出させることだ。運河は過去、浚渫されたことがなく、以前は難しいことだったが、今は浚渫が済み、99台のポンプを使って一日3000万㎥の水量を排出できる。
(*浚渫:港湾・河川・運河などの底面を浚(さら)って土砂などを取り去る土木工事のこと。wiki)
これを含めて、政府は今、すべての川と運河で一日4~5億㎥の水を海に送り出すことが出来る。従って100億㎥の水を排出するのには、なお20日以上かかる計算となる。なぜもっと速いペースで水を送り出せないのかというと、運河は灌漑用にゆったり流れるよう作ってあり、洪水の排水用ではないからだ。今回の状況を考えれば、今後は洪水の排出機能も付加するよう、考えていかなければならないだろう。
(*灌漑:農地に外部から人工的に水を供給すること。wiki)
■バンコクの洪水被害
バンコクはどうなるかと言えば、私は市内は大丈夫だと思う。ポンプも備えた排水設備が広がっているからだ。最も洪水の影響を受けるのは、東と西の地域、ラット・クラバン、ランシット、ミン・ブリ、クロン・サムワといったところだと思う。
それらの地域は、土地によって1~2mの深さになるかもしれない。今から2~4週間、バンコク周辺は洪水だと思って避難にあたって欲しい。水は1日に2~3cmずつ増えるが、障壁が増えるに連れて運河や野原に水は多く流れ込む。
雨域は次第に北から南に移っている。今後雨が降らなくなっても、北からやってくる水の排水に3週間以上かかるということだが、その間雨が降ればその分時間と被害も増えよう。10月22日夜、バンコクは洪水警報を出した。
関連記事:
【タイ大洪水】自然災害か人災か?ダム貯水管理体制への疑問(ucci-h)(2011年10月14日)
【タイ大洪水】首相「この洪水は1ヶ月以上続く」=ついに始まった都心浸水(ウチャ)(2011年10月23日)
関連リンク:
タイ洪水:空港に避難者4000人殺到 受け入れ限界(毎日新聞、2011年10月24日)
【動画】バンコク浸水続く 対策センターのある空港にも…(テレ朝news24、2011年10月23日)
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