中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年10月24日
■おなじみの温古知新のインド話から環境問題まで……
ストーリーは主人公の末裔が先祖の土地をデベロッパーに高値をつけられ、売却しようとするところから始まる。それを現地の男に「おまえの先祖は命がけでこの地を守ったのだという」という語りで過去を振り返る手法だ。過去の名もなき人々が戦ったからこそ今のインドがある、というメッセージはすごくインド的だと思った。その一方でそれを環境問題にまで発展させたのはいささかテーマを広げすぎのような気もした。
■日本版は40分カット!醍醐味である踊りが……
脇の登場人物の描き方がなんだか雑のような気がして後で調べてみたら、原作は160分であり今回の上映は120分。40分のカットであった。主人公がバスコ・ダ・ガマの侵略により両親を失ったことから恨みを持つのはわかるが、その他の人物がなぜ、どういう理由によって何を憎んでいるのか……という説得力がいまひとつこちら側に伝わってこない気がした。
多くの曲がカットされていたようだが、せっかく主人公の親友役が古典舞踊も修めたダンスの名手なのだから、もっと彼の踊りが見たかった。上映時間の制限もあろうが、こういう映画祭だからこそノーカットで上映してほしかった。
■大作らしいスケール感、迫力の映像
とはいえこのようなスケールの大きい映画がマラヤーラム語映画で上映されていたことに驚いた。船がインド大陸に迫ってくる映像は重厚で迫力があった。カシミールの自然を背景に少年とロバを描いた「タハーン」の牧歌的な映像も美しかったが、このギャップはさすが撮影監督もつとめるだけある。
■「秘剣ウルミ」が物足りない
カットされている部分が多いので正確なところはわからないが、今回の上映のみを見た感想でいえば、もっと「ウルミ」という秘剣を使い、歴史的冒険活劇に徹した方がよかったような気がした。長くしなやかな剣というだけで、秘剣というにはちょっと存在感が弱い気がした。時に悪魔のような危険な魔力を持つ、制御しきれない生きもののような剣にした方が面白かったのではないか。
(ウルミ:インドの武術、カラリパヤットで使われる柔らかい鉄で作られた長剣。wiki)
ちなみに見たことがある顔があるなと思ったら、ヴィディヤ・バランが出ていた。良い意味で存在感が大きすぎないところが幅広い作品においてどんな役でもこなせる。現在も息長く活躍しているタブーのような女優さんになるのではないかと期待している。
1年後には日本でテレビ放送されるはずであるが、来年も是非インド映画が上映されることを願っている。
関連リンク:
【秘剣ウルミ】(Urumi, 2011, Malayalam)を観てきました!(むんむん's Diary、2011年10月18日)
ランダムサウス029(Togetter)
*当記事はブログ「インド映画通信」の許可を得て転載したものです。