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2011年10月25日
■ネットで知り合った臓器ブローカー
今回の診療所摘発は実際に腎臓を売った男性が通報して明らかになったもの。通報者の王明さん(24歳)はギャンブル好き。離婚した両親と関係が悪く、15歳から非正規職の仕事で食べてきたが、どうにもお金が足りない。困っている時、ネットで「非腎勿擾」というハンドルネームの人物と知り合った。違法腎臓売買のブローカーだ。
(ハンドルネームの意味は「腎臓がなければ邪魔するな」。人気映画「非誠勿擾」(狙った恋の落とし方)をもじったもの。やはり邦訳は「狙った腎臓の落とし方にするべきだろうか)
「売るか売らないかは後で決めるとして、とりあえず一回会おうぜ!」と言葉巧みに誘われた王さん。重慶市からはるばる河北省石家荘市へとやってきた。「腎臓なんか1個減っても大丈夫だから、さ」とブローカーに説得を受けた。その晩は一睡もできなかったと話している。
結局、「売っちゃおう」と決めた王さんだったが、別のブローカーを探すことになった。その場所で知り合った同郷人が「いやー、ここで2カ月待っているんだけど、まだ腎臓を売る順番が来ないんだよね」と教えられたためで、その同郷人の紹介で、王さんは済南市に行くこととなった。
■手術台の上で渡された金
というわけでやってきたのが済南市。王さん以外に4人も「売却希望者」がいたが、現地の大病院で精密検査を受けた後、すぐに順番が回ってきた。
8月25日夜、王さんは手術台の上にいた。怖くなって、本当は断りたかったというが、時すでに遅し。手術台の上で2万元(約24万円)が振り込まれた通帳を渡されたのだった。麻酔をかけられ2時間ほど意識を失った。そして目を覚ますと、もう王さんの腎臓は失われていた。
3日間だけ入院した後、王さんは診療所を出た。その時点で後悔していたかどうかはさだかではないが、すぐに自分の過ちに気づくことになる。手術の跡がいつまでたっても化膿したままなのだ。病院に駆け込み治療を受けたが、1カ月経っても治らない。「どういう手術をやってんの?!」とブローカーにクレームを入れたが、梨のつぶてだった。
かくして王さんは済南市に戻り警察に通報したという。10月23日夜、警察はその診療所を捜査した。手術室に警官が入ると、麻酔をかけられまさに腎臓が摘出されようとしている患者が手術台に寝ていた。
■蔓延する臓器売買ビジネス
臓器売買ビジネスが流行している中国。今回のように明るみにでたケースも少なくない。山東省では先月も違法な臓器売買が摘発されたばかり。今年6月には「iPadが欲しかったから腎臓を売っちゃった高校生」という、あまりにも切ないニュースもあった。
・関連記事、参照リンク
「iPadが欲しかったから」17歳の少年、両親に内緒で腎臓を売る―中国湖北省
借金返済に腎臓売却=中国臓器売買の闇―翻訳者のつぶやき
臓器売買で医師ら8人を検挙…手術室に警察踏み込む=山東(サーチナ、2011年10月13日)
臓器売買絡みのニュースをあさっていてすごかったのが9月18日付揚子晩報の記事。
好待遇のいい仕事見つけたよ!
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やたらと念入りな健康診断だなぁ……
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出張したけど、宿泊先が病院なんですが……
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朝起きたら腎臓がない!