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「カダフィとは昔から友達でもなんでもなかった」中国政府、鮮やかすぎる掌がえし(水彩画)

2011年10月25日

■中国の良き友人■

あまり呼ばれたくない呼び名だと思うのですが、世間には「中国の友人」と言われている人たちがいます。日本の政治家ならば、中国建国60周年式典の記念パレードを天安門から見学した村山元総理が典型でしょう。

もちろん民主党や自民党にも中国の友人認定を受けている政治家もいますが、天安門に登ることで周囲にどう見られるかということをよく知った上で、敢えて登ったこと、そしてその事実を隠さない村山さんはさすがに格が違います。


Muammar al Gaddafi Mouammar Kadhafi R.I.P. Colonel Quaddafi painted portrait _DDC6340 / Abode of Chaos


*当記事はブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。


■壮絶に逝った「元友人」

2011年10月20日、リビアのカダフィ大佐が反カダフィ派に捕えられた後に射殺されました。実はカダフィも中国の良き友人の一人。長らく武器などの援助を受けていました。7月にも中国の兵器製造企業が、カダフィ側に武器提供を持ちかけていたようです。
(関連記事:「中国がリビア内戦でありえないぐらい失敗している件=カナダ紙のスクープと中国の弁明」2011年9月7日)

今春から始まったリビア内戦が激しさを増す中、中国政府は「リビアの未来はリビア人民が決めること」と主張し、介入した英仏に否定的な立場。中国人民は中国の未来を決められないのですが。というわけで、どちらかといえばカダフィ寄りだったのですが、カダフィの敗北が確定的になった時点で、「中国の友人」という称号を取り上げていたことがわかりました。


■いつの間にやら絶交宣言

・盧沙野アフリカ局局長、"Jeune Afrique"記者の取材に答える(外交部、2011年10月21日)

上記リンクは、仏誌ジュンヌ・アフリックの取材に中国外交部の盧・アフリカ局局長が答えたインタビューの文字起こしです。この記事でカダフィが中国の友人ではなくなっていることがわかりました。

記者:
「中国は既にリビア暫定委員会を承認しましたか。」

盧:

「ええ、我々はすでに承認しています。」


記者:
「暫定委員会は中国に大使を派遣しましたか?中国はトリポリに大使を派遣しましたか?」

盧:
「我々はずっとトリポリに大使館を置いています。戦争が最も激しかったころには、一部大使館員が一時的にトリポリを脱出していましたが、現在彼らはすでに大使館に戻りつつあります。」


記者:

「中国はいつこうした変化を受け入れ始めたのですか?中国はずっとこの件はリビアの内政問題だと指摘し、アフリカ連合の立場に準じた態度をとっていました。リビア問題で中国はアフリカ連合の立場を参照したのでしょうか?」

盧:
「中国は状況に対して自分で立場を決定します。我々は一貫してリビアの未来はリビア人民自身で決めるべきだと考えてきました。我々はリビア情勢の発展に基づいて、適当な時期にリビア全国過渡委員会を承認する決定を行いました。(中略)リビア問題において我々はアフリカ連合の見解と調停の努力を支持します。」


記者:
「リビア全国臨時評議会の承認問題で、適当な時期という言葉を使われましたが、中国はいつが『適当な時期』だと判断したのですか?」

盧:
「リビア国民評議会が事実上リビアの政権を運営し始めたころです。」

中国が国民評議会を承認したのは9月12日なので、適当な時期というのはその前になるのでしょう。中国国内にある旧リビア大使館から大使館員などを追い出したのはいつ頃か気になるところです。

この後、盧氏は「中国って内政不干渉とかいいつつアフリカの独裁国家を支持しまくってるよね」と記者に突っ込まれ、「西側はさあ、ムバラク(エジプト)とかベン=アリー(チュニジア)とは20年から30年もの間、ずっと友人だったじゃん。カダフィは中国の友人じゃないけど、西側はカダフィとの関係も良かったよね」と、中国とリビアとの密接な関係についてはなかったかのような発言をしています。


■4月時点で張っていた予防線


「友人」をあっさり裏切った中国では、しかし、急に方針を転換したわけではありません。4月にはすでにその兆候があったのです。

・カダフィは「中国人民の古い友人」ではない(人民日報、2011年4月13日)


暫定政権が勢力を拡大しつつあった4月の時点で、中国はすでに予防線を張っていました。忙しい人のために超約すると、「西側のメディアはなんか誤解してるみたいだけど、中国は公式報道でカダフィを友人と呼んだことは一度もない」ということだそうです。

まあ、4月時点で予防線を張っていようがいまいが、中国がカダフィと超お友達だったことは誰でも知ってるわけで。中国の態度が明らかに変わったのは、8月に中東問題の専門家が人民日報主催のネット対話に参加し、再度「カダフィは中国の古い友達ではない」と強調してからでしょうか。


■武器供与発覚が縁切りの決め手


・中東問題専門家「カダフィは中国人民の古い友人ではない」(人民日報、2011年8月22日)

この記事では、台湾問題や原油などのトピックについて、カダフィの非を批判しまくっています。4月の時点では情勢が不透明だったのが、首都トリポリを追われて敗色濃厚になったため、「カダフィの失脚は民心を失ったからだ」と非難もしています。

外交分野では、御用学者が自由に発言するということは皆無なので、8月時点で中国共産党中央のカダフィ認識を反映する内容でしょう。

一方でカダフィに肩入れする報道もあり、見捨てたとまではいかなかったのですが、9月に入って前述の武器供与が発覚。リビア国内の復興利権に食い込みたいという実利的な判断も絡み、遅ればせながら中国も臨時政府を承認し、正式に「縁切り」しました。


■いざとなれば「弟」とも……?


この見事な掌がえしを見ると、連想してしまうのが中国の「弟」北朝鮮との関係。25日から李克強常務副総理が訪問するなど緊密な関係が続いているのですが、いざとなったらリビア同様、「実は弟ではない」と言って、一方的に絶縁宣言するんでしょうかね。

こういう一方的な絶縁を目の当たりにして、日本国内にいる「中国の友人」さんも心を入れ替えてくれるとありがたいのですが。

関連記事:
【リビア内戦】中国の被害はハウマッチ?5兆円の投資はどれだけ毀損したのか(2011年9月13日)

*当記事はブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。


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