■中国オタクの世代間の違いについて 2011年版■2011年10月27日、
秋葉原のUDXで行われる「東京国際アニメ祭2011秋シンポジウム」、「
「80后」「90后」が変える中国のアニメビジネス」に参加することになりました。
他にも作家の安田峰俊さんや映画専門大学院大学の郭文放さんが参加されます。
(迷路人こと安田峰俊さん:当サイトKINBRICKS NOWでもメインライターChinanewsとのコラボ企画、「金ブリ浪人」でおなじみ。新著『独裁者の教養』が星海社新書より絶賛発売中。)
*東京国際アニメ祭2011秋公式ウェブサイト
私はたぶん、中国のアニメの現状についての話をすることになるかと思います。グダグダになりそうですが、ネタ的にブログでは扱い難い話もできそうなので、もしご興味が湧きましたらぜひ聞きにいらしてください。
コチラのページから事前登録も可能です。
*当記事はブログ「「日中文化交流」と書いてオタ活動と読む」の許可を得て転載したものです。
■「中国オタクの世代間の違いについて 2011年版」
さて、今回はそのシンポジウムの準備も兼ねてネタをまとめていた時に思いついた「中国オタクの世代間の違いについて 2011年版」というのをやってみようかと思います。
以前の記事や、講演をさせていただいた時に「中国における日本のアニメ・漫画ファンの世代ごとの特徴」というのを紹介させていただきましたが、その後時間が経って新たな動きが出てきましたので、現時点までのことも含めてまとめると共に、最近出てきた新しい動きについてを少々書いてみます。
■中国オタク世代
現時点における中国オタクというか、日本のアニメや漫画のファンの世代とその特徴ですが、オタク系コンテンツに接触した時期やその方法で判断した場合、大まかな所では以下のような形になっているかと思われます。
第一世代:テレビで放映される日本のアニメを見て育った世代
第二世代:テレビアニメに加えてVCDによる海賊版コンテンツ、海賊版ゲームに接して育った世代
第三世代:販売されている海賊版コンテンツに加え、P2Pファイル共有ソフトによりコンテンツに接した世代
第四世代:最初からインターネットに触れ、コンテンツを大量に入手、消費して育った世代
第五世代:情報収集やコンテンツの消費以外に中国オタク独自のイベントも行い、日本のオタク事情をリアルタイムで追いかけ、日本の創作の場においての活動もする世代
中国は地方ごとに経済発展や情報環境の整備状況が異なるので年代による明確な区別というのは難しいのですが、ここ20年程の流れは大体こういった所で間違いないと思います。
■特に熱い第二、第三世代=第四世代以降はマニアック思考この中で、特に熱心なファンが多いのは第二、第三世代から入った層ですね。娯楽が少なかった時代に突如として日本のコンテンツが流れ込んだため、当時一番面白かった娯楽が日本のコンテンツだったという世代でもあり、アニメや漫画などに対する思い入れはかなり強いです。
逆に第四世代以降になりますと、日本のアニメや漫画は数ある娯楽の一つという位置づけになってくることから、前の世代に比べて思い入れは薄くなる傾向があるようです。ただ、第四世代以降というのは大量の情報に触れながら育った世代でもあるので、日本のオタクのように非常にマニアックな人間も多く、それこそディープなハマり方をしているのも少なくない模様です。
また、知識量と日本語能力に関してはネットで大量のコンテンツに触れて育った最近の世代の方が上になる傾向があります。
■中国オタク第五世代そして今回新たに紹介したいのが中国オタクの最新の世代である「第五世代」ですね。この世代は、「中国オタク独自のイベント開催」「中国オタクの創作活動によるコンテンツの発信」、「オタク市場の形成」といった特徴があります。
この新たな世代に対して、特に大きな影響を与えたのはニコニコ動画とpixivです。ニコニコ動画は、ランキング動画や動画につけられたコメントなどにより、中国オタク的にはある種の「情報の集積地」となり、日本のオタク事情の最先端の一部に触れることができるようになりました。
また、ニコニコ動画では「歌ってみた」などによる作品の発表や、MAD動画による素材の活用方法、作品体験の共有の広がり(コメント弾幕など)といったものを知ることになります。そしてpixivでは日本における大量の創作活動というものを知ると同時に、日本人の創作活動に混じって自分の作品の発表し、pixiv内での評価を受け、ランキング上位を目指すといった活動に出会いました。
残念ながらニコニコ動画は現在中国本土では規制され直接見ることはできなくなっていますが、ニコニコ動画によって中国オタクが学んだオタクの楽しみ方や活動のスタイルはしっかりと残っています。
■オタク系イベントの「独立」
それからもう一つ、最近の新たな動きで大きなものとして同人イベントなどのオタク系イベントの「独立」があります。
それ以前のオタク関係のイベントというのは、商業系のフェアに乗っかって客寄せということでコスプレショー(実質的には日本で言う着ぐるみショー的な立ち位置の扱い)をやったりするというのが多く、同人関係の活動に関してはせいぜいそれに付随する形で場を借りるというものだったそうです。
それが、ここ数年で同人イベント単独での活動が行われるようになり、上海などの大都市では数千人規模のものも開催されるようになってきました。また同人イベント以外にも、中国オタク達の企画による日本の声優を呼んでのイベントが行われるようになってきています。
■同人市場の活性化=「食える」人間まで更に、これらのイベントでは同人誌や同人グッズの流通や、イベントのチケット販売等によりちょっとした市場が出現しています。特に同人市場は面白いことになっているそうで、海賊版が流通しまくっていることからコンテンツの販売で稼ぐのが非常に難しい中国において、クリエイターが「食っていくくらい稼げる」ような市場ができているのだとか。(現状はあくまで「そこそこ」というレベルで、「ウハウハ」というのではないそうですが)
この辺りに関しては、中国オタクによるボトムアップの動きも目立ちます。またこれらのイベントの中心には、それ以前の世代が大人になって関わっていることも多く、中国オタク達の中にも成長していよいよ深みにハマっている(?)のが出てきているようですね。
中国オタクの最近の新たな動きについては、大体こんな所でしょうか。こういった変化は追っかけている方としても非常に面白いので、私も引き続き追っかけてみようかと思います。
とりあえず、こんな所で。例によってツッコミ&情報提供お待ちしております。
*当記事はブログ「「日中文化交流」と書いてオタ活動と読む」の許可を得て転載したものです。