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2011年10月27日
そして、パトゥム・タニにあるタイ最大のナワ・ナコーン工業団地では、227工場が水没したが、ソニー、ニコンはじめ、内104工場は日本企業だ。10月20日に浸水した同じくパトゥム・タニのバンカディ工業団地でも、東芝の主力工場が3mの深さの水に没した。これらタイの中央平原地帯の工業団地の工場の半分強は、日本の工場、ないしはその部品工場なのだ。被害額はとてつもなく大きい。
ここまで水没した7つの工業団地の工場数は、ナワ・ナコーンの227工場、ロジャナの198工場を筆頭に、全部で844工場。うち半分強の440ほどが日本の工場だ。7つの工業団地の844工場の投資総額は3500億バーツ(約8630億円)ほどである。
(*建屋から機械設備、どこまで含むのか報道では明らかでないが。)
■海外からの年間投資額9か月分の損失
うち半分以上が日本企業だとすると、日本からの投資額は5~6000億円にのぼる。外国からタイへの直接投資が、現在年間5000億バーツ(約1兆2300億円)のペースだから、この洪水で、その9か月分が被害を受けたことになる。
なお、水が入ってきているバンコクには、バン・チャン(91工場、従業員1万3000人)とラット・クラバン(225工場、4万5000人)の2つの工業団地がある。現在、軍隊が出動し、3.2mの堤防を4.2mに盛り上げている。
■外資を他国へ逃がしてはならない
洪水は、被害の規模が大きく、また政治的動乱と違って、直接、長期的にダメージがある。またリスクヘッジも含めて、企業の中には当然工場立地を再考するところが出てこよう。アユタヤ、パトゥム・タニで生産していたものを、チョンブリ方面での生産に切り替えられる会社はいいが……。
そのため、タイ政府は企業の生産設備復旧の支援に力を入れる。でないと、投資家(企業)は他国へ逃げていってしまうだろう。そうなると、7工業団地で洪水で仕事ができない43万3000人の職場も戻らなくなってしまう。タイ全体の製造業への従事者数が516万人(2010年末)だから、この7工業団地で働く43万人と言う数字は、なんとそのうちの8.4%を占める。
■政府が提示している復興支援プラン
政府からの復興支援策として出ているアイデアは5つほどある。
(1)復興の資金需要に対し、特別金利、長期返済で資金を融資すること。
(2)発生した損害に対して、減税を行なう。
(3)工業団地での操業における特権の期間を延長する。
(4)水浸しになった機械の部品や材料の輸入課税を減免する。
(5)母国からの修理要員などの入国に当たって、労働許可やビザを免除する。
義援金・募金情報:
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