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【タイ大洪水】水没した7つの巨大工業団地=政府がもちいる復興プランとは?(ucci-h)

2011年10月27日

■水没した7つのタイ工業団地の全貌と、今後の政府の支援策■

水没した7つのタイ工業団地の全貌と、今後の政府の支援策タイの洪水は、ここまでにアユタヤの5つの工業団地と、バンコクの北側パトゥム・タニの2つの工業団地、今のところ計7つの工業団地を水没させた。

歯止めがかかるかタイ工業団地の水害(チェンマイUpdate、2011年10月18日)
  
タイは以前述べたように、日本が最大の直接投資家。420社ほどの日系工場が水没した。

増加する海外中小企業のタイへの投資(チェンマイUpdate、2011年6月9日)


20111026_タイ_洪水_ソニー
易摂誌の報道。

アユタヤのロジャナ工業団地では、ホンダはじめ147の日本の工場に浸水した。キティラット副首相が日本企業の人の肩を抱いて泣いたハイテク工業団地では、143工場のうち100工場が日本企業だ。10月4日最初に浸水したサハ・ラタナナコーン団地では日本の35工場(全体では43)、バンパ・インでは30、中小の多いファクトリー・ランドでは日本の5工場が水没した。

*当記事は2011年10月25日付ブログ「チェンマイUpdate」の許可を得て転載したものです。


そして、パトゥム・タニにあるタイ最大のナワ・ナコーン工業団地では、227工場が水没したが、ソニー、ニコンはじめ、内104工場は日本企業だ。10月20日に浸水した同じくパトゥム・タニのバンカディ工業団地でも、東芝の主力工場が3mの深さの水に没した。これらタイの中央平原地帯の工業団地の工場の半分強は、日本の工場、ないしはその部品工場なのだ。被害額はとてつもなく大きい。

ここまで水没した7つの工業団地の工場数は、ナワ・ナコーンの227工場、ロジャナの198工場を筆頭に、全部で844工場。うち半分強の440ほどが日本の工場だ。7つの工業団地の844工場の投資総額は3500億バーツ(約8630億円)ほどである。
(*建屋から機械設備、どこまで含むのか報道では明らかでないが。)


■海外からの年間投資額9か月分の損失

うち半分以上が日本企業だとすると、日本からの投資額は5~6000億円にのぼる。外国からタイへの直接投資が、現在年間5000億バーツ(約1兆2300億円)のペースだから、この洪水で、その9か月分が被害を受けたことになる。

なお、水が入ってきているバンコクには、バン・チャン(91工場、従業員1万3000人)とラット・クラバン(225工場、4万5000人)の2つの工業団地がある。現在、軍隊が出動し、3.2mの堤防を4.2mに盛り上げている。


■外資を他国へ逃がしてはならない


洪水は、被害の規模が大きく、また政治的動乱と違って、直接、長期的にダメージがある。またリスクヘッジも含めて、企業の中には当然工場立地を再考するところが出てこよう。アユタヤ、パトゥム・タニで生産していたものを、チョンブリ方面での生産に切り替えられる会社はいいが……。

そのため、タイ政府は企業の生産設備復旧の支援に力を入れる。でないと、投資家(企業)は他国へ逃げていってしまうだろう。そうなると、7工業団地で洪水で仕事ができない43万3000人の職場も戻らなくなってしまう。タイ全体の製造業への従事者数が516万人(2010年末)だから、この7工業団地で働く43万人と言う数字は、なんとそのうちの8.4%を占める。


■政府が提示している復興支援プラン


政府からの復興支援策として出ているアイデアは5つほどある。

(1)復興の資金需要に対し、特別金利、長期返済で資金を融資すること。
(2)発生した損害に対して、減税を行なう。
(3)工業団地での操業における特権の期間を延長する。
(4)水浸しになった機械の部品や材料の輸入課税を減免する。
(5)母国からの修理要員などの入国に当たって、労働許可やビザを免除する。

これはこれでいいことだろうが、投資家としての要望は数ヶ月操業ができない間の従業員に対する支払いの補助金を出してくれ、といったものから、地元の関連企業に融資してくれ、といったものまで多種多様だ。


■設備、インフラを整え抜本解決を

しかし、最大の要望はもちろん「2度と水没がないように、政府として設備、インフラを整えてくれ」といったものだろう。もちろん政府としては、今回水が引いた後、なんらかの策を講じたいわけだが、予算の関係もある。一体どこまでできるだろうか。

といって、「何十年に一度の天災だから……」と言って、何もしないわけには行くまい。ダムの貯水管理方法の改善と並んで、灌漑システムへの新たな投資が必要になってこよう。
(関連記事:「【タイ大洪水】政府の洪水対策失敗、2つの要因=長期化する排水処理(ucci-h)」2011年10月24日)

バンコクの運河、用水路は、農業用、灌漑用だけでなく、洪水時の高速排水路としての機能が必要なことがはっきりしたからだ。天災の年2011年の終わりを、インラック新政権はどんな方策をもって迎えることになるだろうか。

関連記事:
【タイ大洪水】政府の洪水対策失敗、2つの要因=長期化する排水処理(ucci-h)(2011年10月24日)
【タイ大洪水】自然災害か人災か?ダム貯水管理体制への疑問(ucci-h)(2011年10月14日)

関連リンク:
タイ洪水で世界HDD部品9割を納品する工場が浸水被害(2)(中央日報、2011年10月26日)
日系企業の生産・収益に打撃、洪水長期化なら日本経済下振れ必至 (Reuters、2011年10月25日)

義援金・募金情報:

タイ洪水被害への義援金・募金受付まとめ(メモノメモ)

*当記事は2011年10月25日付ブログ「チェンマイUpdate」の許可を得て転載したものです。

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