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ロシア人の夢は「すごいもの」を造ること!高まる妄想でまとまらない会議(タチアナ)

2011年10月28日

■ロシア人の夢はすごいものを造ること!■

仕事でロシアの色々な工場の技術者の打ち合わせの通訳をすることがあります。日本人同士の打ち合わせだと、ホワイトボードが登場して大事なポイントを書き込む形式になることが多いと思いますけれども、ロシア人同士の打ち合わせではホワイトボードがめったに登場しません。あくまでも私の観察ですけれども、ロシア人の話し合い方は井戸端会議のようです。みなさんああでもないこうでもないと、次から次へと色々な問題を出しては、どんどん暴走して本題からますます離れていきます。

営業部門の人がベラベラしゃべるのはまだわかりますけれども、ロシアの特徴は技術者たちの方がおしゃべりです(というかロシア人はもともと専門に関係なくおしゃべりが多い)。目の前にある図面の話題が尽きたら今度は今までの経験を語り始める。どこそこの工場で見た設備や生産方法……、憶測や噂も交えながらどんどん話を膨らませていって、みなさん盛り上がってしまいます。


Soviet Vostok 1 replica / wbaiv

*ユーリイ・ガガーリンを乗せ、人類初の有人宇宙飛行を達成したボストーク1号。

そして、このような打ち合わせの終わり方はいつも同じです。日本人はうんざりし、盛り上がっているロシア人たちの間に割って入って「じゃ、こうこうこうしてくださいね」と一気に話をまとめてしまいます。

結論をあっさり出しすぎているため、ロシア人技術たちはやや不満そう……。

*当記事はブログ「ロシア駐在日記」の許可を得て転載したものです。


■話をまとめようとする努力をしない


「話をまとめようとする努力をしないんだよね」と上司はいつも嘆くのですが、ロシア人の私から見てもその通りです。通訳として一生懸命話を聞いているので、余計にそう思います。何を作るにもロシアの工場の納期が長いのも、各段階でそういう「ああでもないこうでもない」話で時間がどんどん過ぎていっているからではないかと、と思うぐらいです(日本ほど自動化が進んでいないというのもありますけど)。


■ロシアの国民性小話


 ロシアでは色々な国の人の国民性について小話がいっぱいあるのですが、今日の話にちょっと関係のある小話をご紹介します。

ヨーロッパ人(国の名前忘れた)の夢は、出世。

アメリカ人の夢は、大金持ちになること。

ロシア人の夢は、何かすごいものを発明すること。


■ロシア人には「芸術家」タイプが多い

最近色々変わってきていると思いますけれども、なんとなくロシア人には「芸術家」タイプが多いと思います。

技術者たちの話がまとまらないのもそのためだと思います。つまり、みなさんは「こういう条件を満たしている製品をこの納期で作る」という意識で動いているのではない。どうもみなさんにとってこうした条件は考えるための「きっかけ」にすぎないようです。話し合いの中で想像がどんどん膨らみ、色々なアイディアが出てきて、頭の中の製品がますます素敵になっていくのですが、肝心な納期などの出発点となった「制限」が忘れられてしまう

そして、気が付くと、みなさんが話し合いの結果行きついた素敵な製品は実は「既存の設備じゃ作れない」とか「加工が大変だ」などの問題がいっぱい。そうなると話が行き詰ってしまい、みなさん何となくこの製品に対して関心が薄くなり、会話が自然と別のテーマへと移る……。観察しててどうもそう見えてならない。


■国家プロジェクトは量産とは違う


ちなみに、「この国には一体どうしてロケットが作れるんだろう」という疑問を私は今まで色々な日本人から聞いてますけれども、私から見れば答えは簡単です。ソ連のときの教育レベルの高さなどもありますけれども、このエントリに関係しているのは、国家プロジェクトは量産とは違うという点です。

ソ連のときの宇宙開発は、原価などを一切気にしないでインスピレーションに任せたまま理想をどんどん追求できた。そして、そういう仕事の仕方なら、上記の小話の通り「すごいものを発明したい」というロシア人技術者にとってまさに理想的な環境なのです。


■お互いの長所を行かす


「できたときが納期だ」とか「原価は一切関係ない」などのソ連のときからの働き方・考え方が徐々に変わってくるとは思いますけれども、何年経っても「ロシア」は「日本」になることもなければ「ロシア人」が「日本人」になることもあり得ません。従って、合弁会社ではそれぞれの長所を生かしてお互いを補い合うように日本人とロシア人をまとめるよう工夫するしかないと思う今日この頃です。

*当記事はブログ「ロシア駐在日記」の許可を得て転載したものです。

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