中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
■純粋に娯楽を追い求める映画があってもいい
ある作品は現在直面している社会問題を映し出す鏡として国民の声を反映させる。またある作品は時代と歴史を描く。私が印象に残ったのはある監督が「映画にメッセージなどない。男女が出会って恋をする物語を描いているのだ。」というインタビューだ。清々しいまでに言い切っていた。
映画にメッセージを織り込むのはもちろんすばらしい。だが純粋に「娯楽」を追い求める映画があってもいいではないか。アミターブ・バッチャンのインタビューでも「日常の苦しい生活を映画館に行ってまで観たいか。スクリーンには皆夢を求めている。」といったような趣旨のコメントを残していた。インド人は作り手も観客もみんなインド映画が大好きなのだ。その熱さが伝わってくるような作品だった。
■インド映画を知らない人にこそ観て欲しい
作品を観ていて、自分が初めてインド映画に出会った頃のことを思い出した。それまでの私は普通の日本映画やハリウッド映画しか観たことがなかった。映画は好きでも嫌いでもなかった。それがインド映画に出会って(最初はダンスシーンとの出会いだったが)「なんじゃこりゃ~!?」とカルチャーショックを受けたのであった。
おそらくさほどインド映画のことを知らない人がこの作品を観たら、世界にはこんな映画が存在することに、同じようなショックを受けたのではないかと思う。そして絶対に「もっと観たい!」と思ったに違いない。よく言われる「突然歌って踊り出す」インド映画のこれらのシーンがいかに作品を盛り上げ、時にストーリーの核となるような重要なものだということが、少しはわかっていただけたのではないかと思う。
ボリウッド好きなら泣いて喜ぶようなシーンの連続で、本当に楽しい時間が過ごせた。そして世界に類をみない、このような映画を是非作り続けてもらいたいと思った。
■最後にちょっとした感想
・新旧「DON」の対比など、実はボリウッドマニアにも喜べる作りとなっている。やっぱりアミターブと比べるとシャールクのDONは軽いなぁ。
・「DEVDAS」のマードゥリーとアイシュの超華麗なダンスシーン、比較的最近の作品なのに画像が悪かったのが残念。
・やたらリティックが出ていた。でもダンスはやっぱりすごい。大画面で彼のダンスが堪能できた。「Dhoom2」からの入りで掴みはOKだった。ダンスのレベルだって高いんだぞ、とひとりドヤ顔。
・一時代を築いたシュリデヴィの出番が少なすぎる。
・最後「Mr.India」の「モガンボは幸せだ」で締めたのはさすが。
・原題がスクリーン下段に入っていたらもっとうれしかった。(あとで調べやすいので)