中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年10月31日
■土地収用が生み出す官民衝突
「官民衝突」。すなわち、地元政府と一般市民が対立する事態だが、最近では環境破壊が問題になることもあるが、やはり最大の問題は強制土地収用であろう。一般市民にとって最大の財産である土地が取り上げられるというのはとても許せない事態である。
補償が満足いく水準ならばまだしも、金での保障を選択すれば同条件の家を買えない程度しかもらえずに郊外に移動。代替住宅を選択すれば不便な場所かつ手抜き工事の危険大というリスクが待ち構えている。かくして一般市民は補償の条件をめぐって決死の抵抗を繰り広げることがしばしばだ。中国では「集団性事件」(暴動、デモ、ストライキ、集会などをひっくるめた中国独自の用語)が年に18万件も発生しているが、その多くが土地収用絡みだという。
■地上げ屋の嫌がらせテク
抵抗されたからといって、業者側、現地政府側もはいそうですかと補償金引き上げに応じることはできない。かといって「現地政府とは関係がないけど、『なぜか』立ち退き拒否住民の家をがらがらと破壊してくれる、親切な謎の武装勢力」の力を借りるのは最終手段。
(関連記事:首都の超一等地を襲撃した「謎の武装した男たち」100人)
かくして激しい嫌がらせが展開されることになる。そのショッキングな絵面で、世界的なニュースとなったのが「陸の孤島作戦」。最後まで売却同意書にサインしなかった住宅のまわりで工事を始めてしまったというものだ。周りが数メートルもの深さで掘り下げられたため、塔のようになってしまった。
(参照リンク:“陸の孤島”に居座る住民、「史上最強の立ち退き拒否事件」)
他にも無職の若人を集めて騒がせる、大便を投げ入れる、ドアの入り口を針金で縛る、蛇を投げ込む、サソリを放つなど、考えられるかぎりの嫌がらせテクが駆使されている。
(関連記事:「「お金を稼いで母さんを楽にしたかった」17歳の「地上げ屋」が告白」「床も壁もサソリがびっしり!地上げ屋さんの新戦術が炸裂」)
■対ムスリム用最新嫌がらせテク
今回、博訊網が紹介しているのは新ネタのようだ。北京市旧市街に住む回民(ムスリム)の住宅の塀に豚挽き肉を塗って回るという荒技が炸裂したという。ムスリムは豚肉を食べてはいけないが、豚挽き肉が壁に塗られた家に住んではいけないという戒律は聞いたことがないが……。とはいえ、あまり気持ちのいい事態ではないことは間違いない。
*画像は博訊網の報道。嫌がらせを受けている立ち退き対象住宅。
住民は壁に「命に替えても住宅を守る」とチョークで書いたり、政府の無法を書いたチラシを張りだしたりと懸命に抵抗している。このひどすぎる話と住民の訴えがマスコミまで騒がすようになると事態は動くのだろうが、現時点ではネット掲示板や反政府系サイトの博訊網に取り上げられている程度。住民側の情報戦はまだ成功していないようだ。彼らの抵抗が成功し、補償金条件闘争に勝利することを祈りたい。