中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年11月01日
■「公約」を実現した馬英九総統
来年1月に総統選が実施される台湾では、馬英九総統率いる与党・国民党陣営と、蔡英文主席率いる野党・民進党とが熱い火花を散らしている。
今、台湾経済は好調だ。世界経済が低迷するなか、2010年には10%超という高成長を記録。今年も5%弱という数字をキープする見通しだ。馬英九総統は、「独立とかそういうのを棚上げにして、中国本土とびしばしビジネスして景気をよくしようぜ」という主張で2008年の選挙に勝利している。公約を見事、実現したと言えるだろう。その成果が認められてか、支持率でも10ポイント近くリード。蔡主席が「今回は無理かも」と弱音を吐いたという報道もあったが、早くも再選濃厚という雰囲気までただよっていた。
■馬総統の「失言」
ところが相次ぐ失言で今、リードは急速に縮まっているという(毎日新聞)。中国共産党が望む平和協定について、「交渉を排除しない」と発言。「このまま中国に飲み込まれるのではないか」との台湾市民の不安に火を着けた。慌てて「平和協定を結ぶ前には住民投票を実施する」と宣言したが、「失言」の及ぼした影響は少なくないようだ。
台湾総統選の行方を決めるのは浮動票。「景気が良くなって欲しいけど、中国本土に接近しすぎるのは怖い……」という揺れる心をいかにキャッチするかがカギとなる。その感情のひだを読み間違えたというところだろうか。もっとも来秋誕生する習近平体制では、再び統一問題が話し合われるとの観測もあり、「心の準備をしておけよ」と台湾市民の皆さんにメッセージを送るという配慮だったのかもしれない。
■オバマと子ブタさん貯金箱
閑話休題。本稿のテーマである「募金集め」についてご紹介したい。今回の台湾総統選はオバマの選挙戦を相当意識しており、両陣営はフェースブック、Plurk、グーグルプラスとソーシャルメディアを大活用している。
それに加えて、オバマの資金を支えた「少額募金」についても、真似しようともくろんでいるようだ。記事「台湾民進党の蔡英文主席がかわいすぎる件=日本ラーメン店を体験して大喜び」でお伝えしたとおり、萌えキャラとしての地位を確立した蔡英文主席。少額募金も「ブタさん貯金箱」を配るという奇策を見せた。
*画像は財新網の報道。
大怪獣・馬英九と戦う子ブタさんが蔡英文という見立てらしい。貯金箱にコインをぎっしり詰めると、500~2000台湾ドル(約1300~5200円)になる計算。これを民進党に送ってという寸法だ。人気は上々で、一次生産分の8万個はすべてはけ、さらに10万個を追加したという。正直、私も欲しい……。
一方の馬英九はガソリンスタンドで対抗。選挙スローガン「台湾加油」(台湾がんばれ)をもじって、ガソリンスタンド(加油駅)にしたというわけだ。馬英九バッジやら国旗ミニカバン、ウインドブレーカーなどを販売して小銭を稼いでいる。正直、子ブタさん貯金箱のほうが面白いのではないだろうか。
お祭り騒ぎ的選挙戦が続く台湾。陰謀だけではなく、ちょっと面白い創意工夫も登場するなど、ウォッチしていても飽きさせないネタである。