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2011年11月03日
China-Xian-Oct. 1 baby #3 / Praziquantel
11月3日、華商報が伝えた。
■事件の経緯
10月23日、劉冬梅さんはおなかの痛み、出血を確認し、病院に駆け込んだ。まだ妊娠32週目。出産予定日は1カ月も先だ。だが、医師は早産の兆候があるとして入院を勧めた。
26日午前3時、劉さんは再びおなかの痛みを訴えた。破水したのではないかと劉さんは思ったが、診察にきた当直医師は立ったままの劉さんのおなかを撫でて、薬を処方しただけで去っていった。こんな診察で本当に状態がわかるのかと劉さんは不思議に思ったという。
午前4時半、診察から1時間が過ぎてようやく処方された薬が注射された。「夜中に薬局から薬をもらうのは大変なので」と看護師は説明していいる。
午前5時、劉さんは再び強い腹痛を覚えた。夫の王海章さんが医師を呼びにいったが、看護師しか来ない。別の患者を診ているため手が離せないという。もう一度呼びにいった午前5時10分、ようやく当直医師がやってきた。服を脱いで診察を受けると、すでに胎盤の一部も出ている状態だった。
それを見た医師は「もう間に合わない」とだけ言うと、看護師2人に処置を任せて診察室を立ち去ったという。看護師の手によって赤ちゃんは取り出されたが、泣き声をあげることはなかった。看護師はその赤ちゃんをビニール袋に入れて立ち去った。
■死亡宣告からの復活
看護師は王さんに子どもの死を告げた。子どもは女の子だったとも。
ほぼ20分後のこと、連絡を受けた王さんの姉夫婦が駆けつけた。2人は赤ちゃんの遺体を見せて欲しいと看護師に頼み込んだ。処置室のトイレの一角に白い布がしかれ、その上に黄色いビニール袋が置いてあった。中を開けてみると、そこには確かに子どもの姿が。驚いたことに手足を動かし、おなかも呼吸を証明するかのように動いている。姉夫婦は慌てて医師を呼んだ。
生まれた赤ちゃんは早産ということもあって体重1900グラムと小さいが、出産から約1週間がたった今も元気に育っている。とても一度死亡宣告を受けたようには見えない。ちなみに、劉さん夫婦の赤ちゃんは看護師が告げたような女の子ではなく、男の子だったという。
病院側は検査することなく、医師の経験だけで死亡と判断したことは誤りだったと認めている。なぜ救命治療をしなかったかとの問いには、救命活動をするべき価値があるかないかを判断した、そして患者側が主体的に要求しなかったことが要因だと答えている。
■病院VS患者、対立を煽るメディア
入院していたのに医師がちゃんと診てくれなかったこと、勘だけで死産と判断したこと、遺体をまるでゴミのようにビニール袋に入れてトイレに放置していたこと、そして救命活動をしなかった理由について「救命するべき価値があるかないかを判断した」と失言したこと……。
人々の怒りをかき立てるのに十分なネタがそろっている。実際、勘だけで死産と判断した過失は間違いない。
だが、気になるのは「悪徳病院VS善良なる市民」というテンプレート的報道が中国にはよく見られること。まあ、読者にとっては「やはり病院は悪の組織なんだ、高い金をふんだくってまじめに診察してくれないんだ」と腑に落ちる報道になるのだろうが、果たしてそれだけの話なのだろうか。
まあ、医師が悪者にされやすいのは中国だけではなく、その東にある島国も似たようなものかもしれないが……。