• お問い合わせ
  • RSSを購読
  • TwitterでFollow

貧困と病気に苦しんだ温家宝少年=母校で語った政治改革(水彩画)

2011年11月05日

■急に民生問題を語る温家宝■

*当記事はブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。



China Politics / atsix


持ちネタ・政治改革漫談で知られる温家宝首相。今回は母校の南開中学で、教師や生徒相手に定番ネタを披露。自分語りを枕に政治改革を語ったようです。

温家宝、天津南開中学で講演(天津日報、2011年11月3日)


■貧困にあえいだ幼少期を語る


温家宝はいわゆる平民宰相です。本人の寄稿文によると実家は農家で、父親は故郷の小学校で教師をしておったそうです。

貧しい家に生まれ、日本軍の侵略や国民党と共産党の激戦を間近で体験した温家宝少年。「科学、求実、民主、奮闘こそが中国を救えるのだ」「封建専制と官僚買弁統治を潰してこそ人民は解放される」「絶え間なる革新が中国を進歩させる」と子供ながらに思ったそうです。本人がそういっているのだから、疑ってはいけません。

小学生に上がり、中学生になった頃、ジフテリアに罹った温家宝さん。父親はなけなしの腕時計を売り払って薬を買い、温家宝さんの病状は良くなったものの、その後、長年にわたり父親が腕時計をすることはありませんでした。それでも社会を恨むことはありませんでしたが、「社会の一員は平等であるべき」との思いが芽生え始めたといいます。


■母校愛、共産党愛をとくとくと


南開中学での中高6年間はとても重要な時期だったそうです。小さな頃から一生を祖国と人民に捧げようと志していた温家宝少年、南開中学が提唱する「為公,進歩,創新和改革」(公の為に、進歩、刷新、そして改革)を胸に、国内外の政治、経済文化に関する本を読み漁ったそうで。また、たまに見せるスポーツ好きもこの頃からだとのアピールも忘れていません。

温家宝青年は、母校である北京地質学院(現・中国地質大学)から、地質学の知識と、困難に打ち勝つ勇気、そして民衆に触れる機会を受けたらしいです。また、この頃共産党に入党。また政治運動が元で教師を辞めさせられ養豚に従事させられていた父親を脳溢血で亡くしています。

共産党に入党してからは甘粛省で14年間を過ごします。わざわざ標高5000メートルで頑張ってましたとか自慢しちゃうのが温家宝らしくていいですね。この14年間で基礎群集に接触し、民衆の苦しみと農業の苦難を深く知ると、彼らの幸福のために全てを投げ打った、と話してます。昔からパフォーマーだったんですねー。


■突如として民生問題に言及

おっさんの文章に全部付き合ってると長くなるのでここらで止めときます。

長々と続いた自分語りのあと、「貧乏人にも平等な権利があるべき」「貧乏人を知らなければ、農民と都市の貧困層が分からなければ、彼らの経済学や彼らの教育観などわからない」と、突然民生問題を語り始めています。

核心と思われる部分を訳出してみました。

公平とは生存、競走と発展の機会が全ての人に平等で、金持ちやその他の特権階級だけのものではない。もし政府が民衆と民生を軽視すれば、それは根本を軽視する事になる。そして、公平と正義は社会の要であり、それを失えば、社会という大きなビルは倒れてしまう。

「国の命は人心にある」。これは人心が付いて来るか、背くかは社会の発展と政権の存亡を決定付ける。政府は貧しきものの最後の希望であり、民衆の貧困は政府が最も心を痛めるものだ。この道理を本当に理解していれば、「以人為本」(人をもって本となす)の意味するところが真に理解できるのだ。

そうか。良いこと言ったな。決意は立派ですが、何をやるかさっぱり見えて来ないのですよ。


■で、一体何やるの?


香港紙・明報がこの講演を取り上げています。北京理工大学の胡星闘教授がコメントを寄せ、父親が60年代の政治闘争で迫害を受けた過去を初めて明かしたことで、極左に振れかけている次世代の指導者達を牽制する狙いがあったと指摘しています。

ただ、個人的に感じているのは、温家宝は政治改革や民生問題について発言はするものの、本気で何とかしようとする気配が微塵も感じられないんですよねえ。ここ1年ほど政治改革に関する発言を繰り返していますが、中国共産党中央政治局常務委員会では依然として劣勢が続いていますし、民生関連の発言についても取ってつけたような感が否めません。お得意の民と触れ合うパフォーマンスにしても、現地官僚によって完全にお膳立てされた「舞台」でしかないのでしょうが、温家宝は見抜いていないのか、騙されたふりをしているのか……。

スローガンだけではなく、実際に何が出来るのか何をするのか。貧困層のみならず私も期待しているのですが、パフォーマンス将軍と化した温家宝が、果たしてそんな大問題に着手できるのでしょうか。

なお、例によって今回の一件も報道が地味目。新華社や人民日報ではなく、その一枚落ちの天津市機関紙・天津日報による記事という一点を見ても、温家宝の主張がいかに相手にされていないか分かるというものです。

*当記事はブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。


トップページへ

コメント欄を開く

ページのトップへ