■タイの洪水の各種産業に与える影響度合いはどのくらいか■*当記事はブログ「チェンマイUpdate」の許可を得て転載したものです。
タイの洪水は、バンコクから、その南のサムート・プラカンをも巻き込もうとしている。GDPの落ち込み度合いも気になるが、工場が水没し、物が出回らなくなるおそれの方が気に掛かる。すでに、チェンマイのスーパーでも、商品の空いている棚が多くなった。TMB銀行の調査機関「TMBアナリティクス」が洪水の各産業へ与える影響を分析している。
■被害の半分以上が日本企業からの投資
すでに、アユタヤとパトゥム・タニの7工業団地が水没し、3140億バーツ(約8500億円)の投資が水に浸かったといわれる。半分以上は、日本企業からのものだ。この7つの工業団地で、タイ全体の製造業の22%ほどを供給しているというから影響は小さくない。
■最悪、被害はタイ製造業の60%にも……
人的災害が、ここまで死者437名、水に浸かった家屋300万戸だが、今後、さらにバンコク、サムート・プラカンの工場も水害を受けるとしたら、製造業への影響は広がる。これに、サムート・サコン、ナコン・パトムといった現在進行形の工場を加えると、製造業への影響は、さらに38%増えると見られる。最終的に、仮にタイ全体の製造業の60%が水に浸かったとしたら、程度にもよるが大きなことだ。
(*当記事は2011年11月5日に執筆されたものです。)
世界第12位の自動車生産国タイの洪水被害の影響は、日本車のアメリカ生産にも部品不足として及ぶ。ホンダのロジャナ工場はなお3mの水の中だから、再開まで6ヶ月はかかると見られる。
■各産業への影響度
各産業への影響度を、
(1)すでに大きな洪水被害を受けたところ(赤)、
(2)現在進行中の脅威(黄色)、
(3)洪水のないところ(緑)
の3色に分けて、示されているが、自動車産業はすでに7%、可能性も含むと、77%が被害を受けると予想される。
*2011年11月4日付バンコク・ポストの報道。
■世界第2位を誇るHDD製造に甚大な被害自動車と並ぶ主要な輸出産業でもある電子産業も大きな被害を受けた。赤29%、黄色を足すと、42%が影響を受ける。ことに、タイはコンピュータ用のHDDで、中国に次ぐ世界第2の生産国だ(世界シェア25%)。トップのウエスタン・ディジタル社の、世界生産分6割を担っているナワ・ナコーン、バンパインの2工場が水没した。世界シェア11%の東芝のHDD工場も同様だ。世界第2位のシーゲイト社の工場だけまだ無事だが、予断を許さない。コンピュータの価格は上昇の傾向を見せている。
■最大の被害をこうむった飲料産業ここまでで最大の被害をこうむったのは、飲料産業である(全国の64%が水没)。コカコーラやネッスル、オイシの飲料生産が停止した(ヤクルトもこなくなった)。
そして、水害が今後バンコク以南に及ぶと、今度は、食品、紙製品、衣料品などの生活必需品の生産にも影響が出てくると見られる。バンコク、サムート・プラカン、サムート・サコン、ナコン・パトムへの水の流れに要注意だ。ふくめて、軽工業は自動車や電子産業と違って、全国に広く分布しているので、物不足騒ぎが起こらないよう祈りたい。
■水が引けば……TMBアナリティクスは、ここまでの被害2000億バーツ(約5500億円)のうち、7割の1400億バーツ(約3570億円)は資産の損耗、3割の600億バーツ(約1530億円)が生産物のロスと見ている。生産物のロスは、第4四半期~来年の第1四半期、GDPの足をひっぱろう。
そして資産の水没は、言い方は良くないが、加速償却されたようなものである。水が引けたあとは、その分投資の加速がタイのGDPを引き上げると見ている。はやく水が引いてほしいものであるが、平らな土地に大量にたまった水が引くまでは時間がかかりそうだ。
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カメラ品薄・HDD値上げ…タイ洪水、日本痛手(読売新聞、2011年11月4日)*当記事はブログ「チェンマイUpdate」の許可を得て転載したものです。