中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年11月07日
■大陸的経費流用
2011年11月4日、経済観察報は記事「科研経費江湖」(科学研究経費の世間)を掲載。中国科研費のただれた世界をとりあげている。
日本でも研究費のキックバック、プール金、ピンハネという話はさほど珍しいものではなく、時々新聞を騒がせている。が、それで大富豪となり、愛人を何人も抱え、しかもその愛人一人一人にマンションを買ってやるということはできないだろう。中国の科研費乱用もある意味、大陸的スケール感(?)に満ち満ちている。
(関連記事:トップクラス研究者、研究費で愛人を囲う=3人の女性に住宅をプレゼント)
研究者の皆様の豪遊っぷりがひどすぎるということで、2011年9月14日には中国財政部、中国科技部は共同で「关于调整国家科技计划和公益性行业科研专项经费管理办法若干规定的通知」(国家科技計画及び公益性業界科学研究専門経費の管理弁法に関する若干の規定の通知)を公布した。まあ、一言で言えば、「チェック厳しくするからね。だから無茶はやめて!愛人にマンションプレゼントはやめて!」というメッセージだ。
■根っこから腐ってます
でも、こんな法律出しても意味ないですよ。研究業界は根っこから腐っていますからというのが、経済観察報の記事。匿名で内情を話したベテラン研究者は、「みんなが乱用しているのに、一人だけやらなかったら、変な奴と思われますよ。それどころか、上司に信頼ならない奴……と警戒されるかも」とまで語っている。
さて、乱用の手段はキックバック(高い値段で物を買って業者から裏金をもらう)、自分が作った会社の株を研究費で買うなどの手法が紹介されているが、日本でよく聞くピンハネはないようだ。、権利意識が高い中国人からピンハネすると、すぐに反乱を起こしてしまうからだろうか。
ピンハネ目的で人件費に予算を突っ込んでいないためか、科研費に占める人件費の割合は23.6%と低水準。先進国の平均45%と比べると差は歴然だ。また科研費で雇用された研究者に支払われる給与平均も日本の12分の1、韓国の6分の1と物価以上の開きがあるという。ピンハネはしないが、安い金しか支払わないというところだろうか。
というわけで、科研費乱用が横行した結果、科研費のうち実際に研究に投じられた費用は全体の40%だけだとか。2010年に中央政府が支給した科学技術研究費は1890億元(約2兆2700億円)。うち60%が乱用されたとすると、1兆3600億円が研究者の先生のぽっけに入った計算!なるほど、愛人にマンションなんて安いものかもしれない。