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【写真】高層ビルの間に残されたボロ家=広州最強の立ち退き拒否住民―広東省

2011年11月09日

高層マンションのど真ん中にある空き地とぼろぼろの一軒家。なんとも奇妙なこの光景が広州市から消えた。


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■最強の立ち退き拒否住民誕生の経緯

李雪菊さん(46歳)の家は広東省広州市海珠区龍鳳街にある。1961年建築の古い3階建てのレンガ造り。1階部分で小さな印刷所を営んでいた。

2007年初頭、この地域の再開発が決まった。李さんの家も取り壊されることが決まったが、問題は立ち退き補償金の金額だった。不動産業者は「個人住宅扱い」を算出、敷地面積60平方メートルとして補償金は50万元(約600万円)強を支払うと申し出た。

近い場所に家を買おうと思えば120万元(約1440万円)は必要。足りない分は自分で払うか、あるいはもっと安い郊外に引っ越すかのどちらかしかない。また、李さんの印刷所は小さいながらも月1万元(約12万円)以上の売り上げがあったが、印刷所閉鎖の補償金もない。

李さんは70平方メートルの物件3部屋とオフィススペース45平方メートル分の補償金を要求し、不動産業者と対立した。「李さんの要求を聞きいれれば、立ち退き契約を交わした他の住民が不公平に感じる」というのが開発業者の主張。かくして5年弱の戦いが始まった。


■最強の立ち退き拒否住民の戦い

どれだけ説得を繰り返しても李さんは立ち退き契約にサインしようとはしない。2008年からはさまざまな嫌がらせが繰り返された。家の中に蛇が投げ込まれた、家の周囲に深さ1メートルのお堀が作られて孤立させられた、「謎の男」5人が訪ねてきて脅されたこともあった。

それでも李さんはくじけなかった。嫌がらせに屈することなく戦い続けた彼女だが、大きな衝撃を受けた出来事が2つあった。一つ目の出来事は今年1月、一緒に暮らしていた高齢の父親が死亡したこと。嫌がらせにすっかり参っていたという。李さんは父を失った悲しみよりも不動産業者への怒りのほうが勝ったと話している。父の死後は3階のベランダに空き瓶を山のように並べた。強制的取り壊しに来ようものなら火炎瓶を作って投げつけてやると誓った。

二つ目の出来事は今年7月、朝早くまだ寝ている時間に爆発音でたたき起こされる事件が起きた。後に李さんの家を狙って打ち上げ花火をぶっ放した「謎の男」(うちとは関係ありません@不動産業者)の犯行だと判明している。警察に通報したが、まだ犯人は捕まっていない。爆発音でたたき起こされた李さんは驚き、恐怖を覚えた。以前ならば恐怖よりも先にまず怒りがわいたはず。この一件で、李さんは自らの老いを悟ったと話している。


■不動産業者との和解

李さんの心境だけではなく、不動産企業の態度も変わった。企業幹部が李さんの家を訪れ、条件について真摯に話し合うようになったという。

そして10月、李さんはついに契約書にサインした。近くに130平方メートルのマンションを提供してもらうほか、補償金も支払われる。また、李さんがもう一度印刷会社を始められるよう、貸し物件を探すのも手伝ってくれるのだとか。今後は、「小さな印刷所をやるか、お店でもやって生きていきます」と李さんは話している。

2011年11月7日、広州市の「奇観」であった李さんの家は爆破され、姿を消した。

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*画像は財新網の報道。他写真多数。


■おまけ:史上最強の立ち退き拒否住民になるためには

メディア検閲が強力とはいえ、中国メディアの論調も読者・視聴者目線、つまり「庶民の味方」であることが多い。というわけで、今回の記事も李雪菊さんに120%同情的だが、一方で不動産企業も「何億元も損してます。うちのほうが弱者だよ」とこぼしたというネタもあったりする。

以前、中国の友人に都市再開発について話を聞いたことがあるが、「雀の涙の補償金」という事態は大都市圏に限ればかなり改善されつつあるという。李さんの場合も広州市という大都市に位置していた「地の利」が、勝利した大きな要因だったはずだ。

強制土地収用に関してはいまだにひどい話であふれかえっているが、しかし、少しずつ状況が変わりつつあることも事実だ。

■参照記事
「拆迁近5年 开发商屋主都说“很累” 」(新快報、2011年11月8日)
「李雪菊」(百度百科





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