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2011年11月10日
辛亥革命記念式典で久々に姿を現した江沢民。入場時には観客、そしてテレビの視聴者を意識して、盛んに手を振り、健在をアピールしました。
(関連記事:「江沢民復活の辛亥革命記念大会=テーマは「中台統一」―中国コラム」2011年10月10日)
*画像は辛亥革命記念式典で姿を見せた江沢民。
その時の記事でも書いた雑感ですが、「実際には登場回数を絞ってくるでしょうが、今後もことあるごとに式典には顔を出すでしょう。しつこく胡錦濤に付きまとうという宣言である」と感じました。老いを隠すことはもう難しくても、文字通り死ぬまで付きまとうというわけです。その印象が現実になりつつあることを示す出来事が起きました。
■選挙で健在をアピール
本日2011年11月9日には江沢民関連のニュースが2つありました。第1のニュースは市区人民代表大会の選挙です。
・胡錦濤ら、北京市区人大代表選挙に投票(新華社、2011年11月8日)
*投票する胡錦涛。画像は新華網の報道。
北京市の各区の新しい人民代表選挙が行われ、胡錦濤ら常務委員が投票……というお決まりの記事かと思いきや、「胡錦濤、江沢民、呉邦国……」と江沢民の名前まであるではありませんか。いや、生きているから当然なのですが、江沢民の名前が出てくるのを見るのは何やら驚いてしまいます。
新華網記事では温家宝(上海協力機構の会合でロシア訪問中)を除く常務委員の投票写真が掲載されていますが、江沢民の写真はありません。温家宝と同じく代理人を立てて投票しています。
5年前のニュースを読み返してみると、江沢民自ら投票所に足を運んで投票し、投票所職員と言葉を交わした様子が報じられています。やはりもう来られないような健康状態なのでしょう。
(参照リンク:「胡錦濤ら、北京区県郷鎮人大代表選挙で投票」人民日報、2006年11月9日)
ちなみに投票所ですが、胡錦濤、江沢民、李長春、習近平、周永康が中南海の懐仁堂。呉邦国が人民大会堂。温家宝と李克強が中南海の紫光閣。賈慶林が全国政協機関。賀国強が中央紀律委機関となっています。自分の職場で投票というわけですが、常務委員の戸籍は北京市に移されているのか、少し気になったり。
■書籍刊行発表会で健在をアピール
・江沢民「中国電気工業発展史」に序文(鳳凰網、2011年11月8日)
二つ目のニュースは、人民大会堂で開催された、中国電機工業発展の100年をまとめた書籍『中国電機工業発展史』の発表会です。午後7時からのテレビニュース、要人動態を流す『新聞聯播』で取り上げられました。
同書は、1980年代に電子工業部部長を務めた江沢民の提案で編纂されたとのこと。江沢民も序文とタイトル決定に関わっています。会を主催した張徳江副総理は、「序文は非常に内容に富み、その意義は非常に深い。我々は真剣に学び、確実に実行し、電気工業と工業全体のレベルアップに努力しなければならない」と江沢民に最大級の賛辞を送っています。
集会の副題が「江沢民同志の序文を学習しよう」なんですが、これが『新聞聯播』で流されるとは……。姿は見せずとも影響力は衰えていないですね。出席者は張徳江のほかに、路甬祥(全人代副委員長)、曾培炎(前副総理)など、江沢民に近いメンツが顔をそろえました。
江沢民は次期党大会(十八大)の人事にも口を出すと噂されていますが、今日ご紹介したように名前を出して健在ぶりをアピールすることを忘れないあたりはさすがです。執着心は人一倍で、人事に介入しようという野望が消えていないのも納得かもしれません。
*当記事は2011年11月9日付ブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。