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「ネット情報の垂れ流し禁止」「問題起こした記者は追放」メディア検閲の新規定を公開―中国

2011年11月12日

事実確認なしのネット情報引用禁止などを盛り込んだ「虚偽ニュース報道の厳重警戒に関する若干の規定」が発表された。


■規定をざっと読んでみた

中国新聞出版総署ウェブサイトに掲載された「虚偽ニュース報道の厳重警戒に関する若干の規定」は10月14日制定、19日刊行となっているが、一般的にお披露目されたのは11月10日の新華社報道となる。現在、お上の振った旗に従い、中国各紙は「虚偽ニュース許さまじ」キャンペーンを絶賛展開中だ。

「規定」の内容をざっと読んでみた。

虚偽ニュース報道の厳重警戒に関する若干の規定

序文

真実こそニュースの声明であり、メディアの信頼性の起訴であり、また報道従事者の基本原則である。事実に反した報道を防ぎ虚偽のニュースを途絶するため、国家の関係法規、行政規則に基づき、本規定を制定した。

第1条 ニュース記者による取材活動は国家の法律放棄を必ず順守し、虚偽のニュース、事実に反する報道を辞めること
・取材時には記者証携帯しましょう。
・対立する両者の主張を聞いて、一方的な肩入れは辞めましょう。
・事実を取材することが大事。また聞きや推測で書かないように。
現地取材はしろよ。噂だけで書くな。
・批評報道(コラム)は最低2つ以上のソースを確保しろ。
・他メディアの記事は全文転載してもいいけど、ちゃんと出典を明記しろ。孫引きする時にオリジナルの名前を間違えたらダメ。転載する時、一部分だけ抜き出すのも厳禁。

第2条 ニュース機構はは虚偽ニュース防止のための健全な内部体制を構築せよ
・記事公開までに3人がチェックする多重チェック体制を構築せよ。
・独自取材なのか、転載なのか、ソースは明記しろ。あと国家安全や機密保持などの特別な理由がなければ、取材記者と取材対象の名前は明記しろ。それから大学教授とか偉い人の名前と権威で、あいまいに記事をまとめるのやめろ。
確認がとれていないネット情報や携帯ネット情報で記事書くのはやめれ。読者投稿をチェックせずに載せるのもダメ。
バイト記者はダメ。ちゃんと正規採用せよ。
・問題起こした記者は一定期間、あるいは終身、報道業界の仕事につけなくする。

第3条 ニュース機構は虚偽報道、事実に反した報道の修正制度を構築し、虚偽報道の責任追及制度を整備せよ
・虚偽報道へのクレームなど通報を受けいれる体制を構築せよ。
・虚偽報道の訂正を制度化し、被害に対しては賠償せよ。
・記者の取材や編集のチェックが不十分で虚偽報道となってしまった場合、個人的な責任を追及せよ。

第4条 新聞出版行政部局は行政監督を強化し、国家利益及び公共利益に損害を与える虚偽報道、事実に反した報道を厳しく管理せよ
問題を起こした記者にはまず警告。深刻な場合には記者証の取り消し、及び不良就業記録をつける。この場合5年間は取材・編集などニュース関連の仕事にはつけなくなる。犯罪を構成した場合には終身で禁止する

第5条 本規定は公布日から即日施行される。

赤字強調はChinanews。


■ウェブメディアソース垂れ流し禁止

「規定」で何度も繰り返されているのは、ネット掲示板やマイクロブログの書き込みをソースとして、事実確認なしに報道すること。本サイトの記事をよく読んでいる方ならばご存知だろうが、大事件が暴露されるきっかけはほとんどがウェブソースだ。ちなみにマイクロブログよりも、ネット掲示板の書き込みがソースとなるケースが多いように思う。

「こんな書き込みがあったよー」だけで記事にするなという話だが、取材力で読者をつかんでいる大手メディアはウェブソースを垂れ流ししているケースはそんなに多くない。取材力ゼロの中小メディアにとっては危機的な状況と言えそうだ。とはいえ、結局は条文そのものよりもどう運用されるかのほうが問題だったりもするわけだが。


記者の個人的責任追及

もう一つのポイントは「記者の個人的責任追及」だ。問題を起こせば5年間のメディアからの追放。犯罪を構成するような問題だった場合は一生、マスメディアにいられなくなる。今の会社をやめるだけではなくて、他のメディアに転職することすらできないわけだ。

公権力の問題を激しく暴く報道をすると、会社が怒られるとか編集長のクビが飛ぶというのがもっとも一般的なパターンだったが、今後は実際に取材した記者に罰が与えられるということで、強力な萎縮効果を生みそうな規定ではある。


■政府のお目こぼしラインを探せ

「文化体制改革」をテーマとした第17期中央委員会第6回全体会議(6中全会)を受け、メディア規制を含め、さまざまな規定やプランが導入されている。反骨心のある中国メディアの人々も、今は嵐が過ぎ去るまで我慢という心境かも知れない。

上述したとおり、どんな規定が導入されたとしても、実際にはどのように運用されるかで事態は大きく変わる。当局がどのあたりまで許し、何を許さないのか。その許容ラインを探る手探りの報道がしばらくは続くことになりそうだ。


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