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「ラサの地下水が吸い尽くされてしまう!」巨大商業ビル建設に広がる不安―チベット(tonbani)

2011年11月13日

■ウーセル・ブログ「ラサの地下水が神力不動産に吸い尽くされてゆく…」■

*当記事はブログ「チベットNOW@ルンタ」の許可を得て転載したものです。


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2011年11月11日のウーセルさんのブログを@tibetweeterTYOさんがさっそく翻訳して下さった。

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ラサの地下水がもうすぐ神力不動産に吸い尽くされてしまう……


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*写真は2011年8月中旬、ウーセル撮影。クリックすると大きくなります。

■「神力タイムズスクエア」

温州商人がチベット自治区政府高官の子どもと協力して設立したのがチベット神力不動産開発有限公司だ。同社は2011年、ラサ旧市街と新市街(北京中路と朶森格路)が交わる地点に「神力タイムズスクエア」の建設を始めた。「ラサの商業的ランドマーク」を自称するこのビルは、北京三里屯villageそっくりの外観になる予定だ。

ビル地下駐車場を作るためにはまず地下水を抜き取る必要がある。このために敷設された排水管が北京東路と林廓北路を横切り、ラサ市街の半分を巡っているが、全て地面の上に剥き出しで大通りを通っている。地下水抜き取り工事はいまだに終わっていない。


■ラサの豊かな地下水

史書の記録によれば、ラサは元々「キシュオタン」という名の大きな沼沢地で、中央に湖が一つあった。1300年以上前、ソンツェンガンポ王の命により、チベット人は湖を土で埋め立て、大昭寺(チベット語でジョカン、ツクラカン)を創建。

ジョカンの中心の仏殿には今なお壁面に貼り付いた中央が空洞の石柱が保存されている。寺院の下に地下湖があると伝えられており、石柱に耳をつければ、今もかすかな水の音を聞くことができるという。ラサ旧市街の地下水の豊富さを示す伝説だ。


■市民の不安を無視して工事を決行

ラサ市民は今なお続く地下水抜き取りを不安に感じ、不満を覚えている。関連部門に申し立てをした市民も少なくないが、地下水抽出は止まるどころか、さらに大規模に進行されている。

例えばラサ市政府ウェブサイトに掲載された「ラサ市水利局、神力タイムズスクエア地下水取水工事の試行業務を認可」という文書を見てみよう。

(神力タイムズスクエアの)工事現場は旧市街地中心部に位置し、周囲は人口、家屋が密集している。工事によって深さ20~23メートルの湿式井戸52本が作られる。降水量が多いための水資源論証業務となる。建設期間中の水量と水質の安全性を保証するのみならず、周囲への地質的影響を緩和し、水資源の有効利用と効果的保護を促し、持続的な利用を保障するであろう。

と記載されている。チベット神力不動産公司は、「神力タイムズスクエアはラサ市のランドマークになると同時に、市随一の応接間となろう。全世界がラサを認め、ラサを熱愛し、聖なる都市の真の意味を心から理解するための最初の選択となろう」と公言している。


■古都を破壊しかねない危険な工事

しかし、このプロジェクトはラサ市官僚、チベット自治区官僚と密接に関わっている。官と商が結託しての、街の歴史と地理を省みないプロジェクトである以上、ラサに対して取り返しのつかない巨大な破壊をもたらす可能性もあるだろう。

最近、あるラサの市民はマイクロブログで、「神力不動産の建設プロジェクトは都市建設局跡地に位置している。地下2階まで掘るため、1年もの間、地下水抜き取り作業を続けているが、その結果、地盤陥没の恐れもある」とつぶやいた。

「ひとたび地盤が陥没すれば、工事現場から1.5キロ以内にあるポタラ宮、ジョカン、ラモチェなど、多くの古建築が被害を被り、1000年の歴史を誇る文化財は一瞬にして無に帰すことになる。またラサの地下水を浪費すれば、数年後にはラサ旧市街は深刻な水不足に陥るであろう。この問題に注目して欲しい。このつぶやきを転送して欲しい」と呼びかけている。


■ひび割れと断水、市民の不安

最新の情報では、今年5月、「神力タイムズスクエア」付近、北京東路のツェムンリン近辺に小さい割れ目が確認された。その長さはおよそ1.2メートルあったという。それでも「神力タイムズスクエア」建設現場では、地下水抜き取りが続けられている。

向かいにあるテンギェリン一帯では、これまで2度の断水が起きている。それぞれ4時間と1時間ほどで復旧したが、原因は明らかになっていない。住民たちは神力の工事が原因だと口をそろえた。

神力タイムズスクエアの問題は、今やラサ市民の注目の的だ。声望ある知識人は抜き取りをやめるべきだと発言。庶民の関心も高まる一方だ。12月3日朝10時に抗議活動を行おうという内容の携帯メールの呼びかけもあった。

実際に抗議活動が行われるのか、どうなるのかは分かっていない。大規模な抗議の成功は難しいだろうが、この件に関心を持つ人は増えてきているのは確かだ。11月10日にはついにラサ市政府官僚が「神力タイムズスクエア」工事現場を視察するにいたったという。ただの官僚ではなく、副市長が視察したとも伝えられている。


■チベット人たちのマイクロブログ討論


最後にチベット人のネット民による新浪微博での議論を転載する。

@桑東有縁:神力不動産がラサ旧市街の地下水を1年以上抜き取ってる証拠だ!まだやってるんだよ!

@黒面具:ラサ青年路の軽車両車線はこの水道管に占領されてるよ!

@桑東有縁:5000万でラサ旧市街の全地下水を買い占められるのかな?//@羊兄://西蔵神力不動産開発有限公司は2006年創立、ラサ招商の引資企業の一つで登記資本は5000万元。翌07年に嘉和麗景ビルで憧れのブランドに。2011年神力タイムズスクエアを建設。このプロジェクトは落成したらラサの街の名刺、都市第一の客間になると。

@Sherab:近年の不動産開発で、ラサの豊かな水資源は大きな打撃を受けている。10年前なら、1メートルも掘れば湿った土が出てきたし、旧市街地の住宅の多くは手動ポンプ式の井戸を備えていた。今では5メートル掘っても水は出てこない。地下水がどれだけ減ったことか。//@pubher://@平Tsok//@無遠之夢://@桑東有縁:神力不動産がラサ旧市街の地下水を1年以上抜き取ってる証拠だ!

@桑東有縁:この件は非常に重大だ。みんな真摯に対応せねばならない。皆でつぶやきを転送して問題を広めよう!//@根頓:この俗悪なマーケットが吸い上げた水はラサ住民が30年間飲める量に相当するそうだ。配水管の上に緑のカーペットがあって小花の盆が置かれていて、私たちを踏みつけないでねとか書いてあるけど、一体誰が誰を踏みつけてるんだか。

@貢嘎愛青蛙:{転載}神力不動産の建設プロジェクトの住所は昔、都市建設局があった場所だ。地下2階まで作るため、1年以上も地下水の抜き取りを続けている。こんなやり方では地盤陥没の恐れがある。陥没が起きれば、1.5キロメートル以内にあるポタラ宮、ジョカン、ラモチェなどの多くの古建築が回復しえない被害を被り、1000年の文化財は一瞬にして無に帰すだろう。この問題に皆さん、注目して欲しい。

■ラサのネット民が撮影した「神力タイムズスクエア」建設現場


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図説:ラサ青年路の軽車両車線はこの水道管に占領されてる!


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図説:2011年3月14日、ラサの神力タイムズスクエアは2層の地下駐車場建設のため、地下水を抜く工事を行わねばならず、北京東路や林廓北路をぶち抜いて配水管を敷設……。


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図説:ラサ神力不動産、後ろはポタラ宮。


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図説:いつ撮影されたものだろうか?(ラサ神力タイムズスクエア)


関連情報を付す:

(1) 神力タイムズスクエアのウェブサイト


(2)神力タイムズスクエアのテナント広告


*当記事はブログ「チベットNOW@ルンタ」の許可を得て転載したものです。


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