中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年11月15日
■馬車でやってくる「水売り」
2011年11月11日、中国広播網は黒竜江省鶏西市梨樹区の水道水事情について報じた。この地では上水道の普及により絶滅したはずの職業「水売り」が今も活躍している。その理由は「水道水が汚染されていて使えないため」。飲料水にできないどころか、洗濯に使っても服が黄色く染まるほどだという。
*画像は中国広播網の報道。
というわけで、街には水を詰めたポリタンクを売る「水売り」が闊歩している。三輪トラックで売りにくる者もいれば、馬車を使う者もいるという。風情があるような気もするが、不便な生活に住民は怒ったり、嘆いたり。それもそのはず、水道代金は人頭税方式で徴収されるため、水道を使わなくともお金を取られているという。こうした状況はすでに10年間続いている。
■下流のことなんて知ったことじゃない
鶏西市環境保護局の匡宏興副局長は水道水の水質に問題があることを認めた。水道水を取水している穆稜河が上流で汚染されているためだと話している。鶏西市の上流にある穆稜市には大型火力発電所があるが、およそ浄化処理が行われているようにはみえない、真っ黒な排水が穆稜河に排出されている。穆稜市に流れ込む時点では引用可能な水質である国家3類水質なのに、下流に来た時点では飲用できない4類水質になっているという。
一方、穆稜市環境保護局の杜漢娟副局長は、中国広播網の取材に答え、同市の生活排水、工業廃水は正しく処理されており、3類水質を保持していると主張。鶏西市取水口に到達するまでの「どこか」で汚染されているのだろうと話し、「下流の飲み水のことは下流の問題。うちの知ったことじゃない」と言い放っている。
■「エコ械闘」の時代
以前と比べれば環境意識が高くなった中国だが、田舎ではまだまだありえない状況がまかり通っている。汚水処理設備を備えた工場でも「稼働させると運営コストがかかるから」という理由で、汚水をそのまま排水していることもしばしば。お役人がチェックに来た時だけ稼働させるという寸法だ。
先日、大連市では化学薬品工場の移転を求める市民デモもあるなど、都市部を中心に住民の環境意識、健康意識は高まりを見せている。大連市の場合は「市当局VS市民」という構図を描いたわけだが、川の汚染というケースでは、「上流対下流」という自治体間バトルもありそうだ。
かつての中国では水の分配権をめぐって村同士が争う「械闘」が頻繁に起こっていた(今でもときおりあるというが)。今後は汚染物質のだだ漏れをめぐってバトルする「エコ械闘」が起きそうな気配だ。