中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年11月16日
2011年11月16日、北青網が伝えた。
■合法的海賊版支援サービス
「VeryCD」は2003年に創設されたP2Pガイドサイト。P2Pソフト「Bit torrent」のカタログ的な機能を持っており、VeryCDでお目当ての海賊版動画や音楽を見つけて、「Bit torrent」でダウンロードするという仕組みだった。
VeryCD自体は著作権違反のファイルを保有しておらず、ユーザーがファイルを探す手助けをするだけ。サイト内の「著作権保護声明」は、「うちのサーバーに海賊版コンテンツはない。ユーザーのPCに入っているのみ」と堂々と主張するなど、「合法的海賊版支援サービス」として人気を集めてきた。
(関連記事:P2Pガイドサイトがサービス停止……と見せかけて海賊版動画まとめサイトに変身―中国)
■P2Pガイドサイトが政府に規制されたわけ
中国を代表する海賊版サービスサイトだったVeryCD、その行く手に暗雲が訪れたのは今年初頭のこと。中国政府はVeryCDなどP2Pガイドサービスの取り締まり強化を敢行した。同サイトは泣く泣く海賊版ファイルのカタログサービスを停止。優酷網や土豆網など動画共有サイトの海賊版ファイルにリンクを貼るカタログサービスに転身したが、アクセス数は半減してしまった。
*画像はVeryCD。ガンダムUC第4話のページ。動画共有サイト・土豆網へのリンクが貼られているだけで、VeryCD自体では海賊版コンテンツを公開していない。
なぜ中国政府はP2Pガイドサービスの取り締まりを始めたのか。大きく2つの理由があげられるだろう。第一にP2Pには政府のコンテンツ検閲が効かないためだ。Youtube的な動画共有サイトの場合、公開されているコンテンツを削除すれば、それ以上見られることはなくなるが、P2Pの場合、一度公開された動画を削除することはきわめて困難だ。
第二に海賊版コンテンツから正規版コンテンツへという流れを作るため。日本アニメや外国映画に関してはいまだに海賊版があふれかえっているが、中国国産コンテンツに関しては各ウェブサイトが正規の版権を取得する流れが次第に広がりつつある。
■「老舗海賊版サイト」のサバイバル
苦境に立たされたVeryCDだが、生き残りをかけてがんばりを見せているという。とりあえずの頼みの綱となっているのが昨年から始めた始めたブラウザゲーム。全くの畑違いの分野だが、今年1月から10月の売り上げは1億元(約12億円)に達したという。
また正規の映像配信サイトとして復活しようと、許認可取得にも力を注いでる。すでに放送テレビ番組制作経営許可証、ネット文化経営許可証、動画視聴サイト許可証などの取得に成功している。しかし問題は版権取得コストの高騰。IT企業のプレイヤー数が多く、激烈な競争が展開されている中国では、客寄せの最重要ポイントである正規版権の価格が高騰している。大手企業が潤沢な資金を背景に出血大サービスの「焼銭」攻勢をかけるなか、ブラウザゲームと広告収入だけが頼りのVeryCDが対抗することは難しそうだ。
昔ながらのファンからの人気を集める「老舗海賊版サイト」は果たして生き残ることができるのだろうか?
過去にはよくお世話になったものだが。
最近はYouTubeの中でも削除映像が増えて、もう一度見たい、見過ごしてしまったコンテンツの入手経路がなくなってきた。
著作権保護も大事だが、視聴者の要求への対応方法も考え直して欲しい気もする。