中国の「下水油」(中国語で「地溝油」)問題が止まらない。
*食用油精製の為に集められた残飯。
■下水油概説
日本でもたびたび報じられている、中国の「下水油」。下水を流れる残飯やら汚物から食用油を作ってしまうという驚きの技術。中国の食用油販売量は、生産量と輸入量よりも200~300万トン多い。この200万トン超が下水油と見られている。
だが、実は下水を原料としていない「下水油」もある。その定義をまとめると、以下の3点。、
(1)狭義の地溝油。すなわち下水道に浮かんでいる浮遊物やホテル、レストランの残飯を加工し、製造した油。
(2)品質の悪い豚肉、ブタの内臓、ブタ皮から製造された油。
(3)揚げ物用の油として何回も使った後に、新しい油と混ぜて使われる物」
(1)の下水から作る油のインパクトが強烈すぎて、報道も注目もそこに集中してしまう傾向があるが、流通量に占めるシェアで考えると、(2)や(3)も負けてはいない。いや、むしろ(1)よりも多いのではないだろうか。特に食用油の再利用に関しては、摘発されたという話も聞かないだけに、胸を張ってできる「まっとうな」ビジネスなのかもしれない。
関連記事
「廃油」は西へ向かう=貧乏人が「下水油」を食べさせられる中国のエコシステム
残飯から食用油を精製!「下水油」産業が気づいたら先進的大規模産業になっていた―中国
■政府庁舎の食堂でも下水油が使われていた?!
2011年11月15日、広東省公安庁は「打四黒除四害」
(ニセ食品工房、ニセ製品工場、違法マーケット、エロ・ギャンブル・ドラッグの違法拠点を摘発する取り締まりキャンペーン)の推進について協議するテレビ会議を開催した。席上、下水油の猖獗が話題とされ、「一部の政府庁舎食堂にまで流入していた」ことに言及された。
この一言が注目され、多くのマスコミが取り上げる騒ぎとなっている。「政府の食堂まで下水油って、どんだけー」というがっかり感が半分。「官僚は安全な『特別提供品』を食べていたんじゃないの?」という驚きと疑念が半分といったところだろうか。
(関連記事:<続報>【中国食品】政府高官専用の「安全農園」があった=潜入取材でスクープ―中国)
■夫婦2人で「下水油」4トンを作ってみた!
他にも下水油関係の記事がぽこぽこ上がっている。18日付
新華社によると、安徽省蕪湖市南陵県に済むご夫婦がお二人で「下水油作り」の仕事を続けておられたのだとか。上記区分で言う(2)の「品質の悪い豚肉、ブタの内臓、ブタ皮から製造された油」だが、バイトとして手伝っていた農民曰く、「病死したブタの脂身とかも平気で突っ込んでいましたね(笑)」とのこと。
で、夫婦2人(+バイトの皆さん)が製造した下水油は、2006年からの累計でなんと4トンにもなるのだとか。売り上げは50万元(約600万円)。うち利益は20万元(約240万円)と報じられている。利益率40%という、思わず自分も参入したくなるステキな数字だ。
■ITで下水油を撲滅する
技術力が限りなくゼロに近い、普通のご夫婦でも作れてしまう下水油。これは横行するのも納得だ。しかも、製造所のレベルによって違いはあるだろうが、パーフェクトに作られた下水油は、機械ですら判別できないハイクオリティ食用油だとのこと。これでは取り締まりも難しい。
そんな悩みにおこたえする新技術が開発されたという。上海富程環保工程有限公司は18日、「油水分離器」を発表した(
上海商報)。レストラン等にこの機械を設置すれば、油分と水分を完全に分離することが可能。油分が分離された排水から下水油が作られることはもうない!ブラボー!さらに回収された油分はバイオディーゼルなどの原料としても再利用することができる。
記事には「マイナスプラズマが……」とかなんだか難しそうな字面が飛び交っているが、ちょっとした疑問がある。それは「油分と水分の分離」こそ、下水油作りの第一歩なのだ。それをバイオディーゼルに使うか、あるいは下水油にするかが問題なのだ。
上海では、外食店に分離器設置を義務づけた上で、油分を回収するバケツは電子ロックで施錠。さらにGPSで常に位置を監視し、不正利用を防止する方針だという。ITの力で下水油は撲滅できるのだろうか?
…それにしても宇宙船や宇宙ステーション飛ばしたって、自慢してる国の文化レベルとしては、ひどすぎる