中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年11月19日
今回のネタはTakuro Matsuiさんに教えていただいた。記事は主に新快報を参照した。
Apple Store in Beijing / iz4aks
*Apple Store北京(公式)。
■前回までのあらすじ
18日の記事「アップル、中国ユーザーを切り捨て?!有料アプリがタダになる「ブラックカード」対策導入」で、中国のiTunes Storeでクレジットカードとひも付けされていないアカウントが、無料アプリも含めてダウンロードできなくなった事情を紹介した。
この対策の背景にあるのは「ブラックカード」問題。未払いなどの問題で凍結されたクレジットカード情報がネットショップで売買され、そのカード情報を入力することによって、タダで有料アプリ、有料アドオンが購入できる問題が深刻化していた。あるゲーム会社では今年9月の売り上げの80%がブラックカードによる不正使用で、その分のお金はもらえずに泣き寝入りする事態となっていた。
そこでアップルが導入した対策が、クレジットカードとひも付けされていないアカウントについては、アプリのダウンロードを禁止するという強硬なもの。日本でもコンビニなどでギフトカードを買って決済しているユーザーは少なくない。
iTunes Store 中国はもともとVISA、マスターカード、アメックスという国際的なカード会社のカードしか受け入れてなかったこともあり、クレジットカード情報を入力していたユーザーは少数派。今回の対策は大混乱を引き起こした。
■銀行口座から直接チャージが可能に
「ブラックカード対策のために、正規ユーザーも大虐殺!?」と注目されていた今回の問題だが、アップルはちゃんと救済策を用意していた。
18日未明より、銀行口座からiTunesアカウントに振込ができるシステムが運用されている。主要20銀行の口座に対応している。まず50元(約600円)、100元(約1200円)、300元(約3600円)、500元(約6000円)単位でアカウントに現金をチャージ。その後、チャージされた金額の範囲内でアプリなどが購入できるという寸法だ。
*チャージ画面。
急速にクレジットカードが普及しつつあるとはいえ、ブラックカード問題を含め、中国のクレカ事情はまだまだ未整備。その一方でアップル製品は大人気という巨大市場でもある。クレカの危険性に配慮しつつ、中国市場で稼ぐために他国とは異なる独自の決済システムを用意したもようだ。
*チャージ設定画面。携帯電話番号、口座番号、氏名、身分証番号、住所の登録が必要なもよう。中国の身分証番号を持たない外国人滞在者はチャージ機能を使えるのだろうか、気になるところ。
■「iTunes Store 中国」、中国政府の軍門に下る
また、従来のiTunes Store 中国は値段が米ドル表記だったが、今回、人民元表記に改められた。中国ネット民の間ではボラれているんじゃね?と疑心暗鬼も広がっているようだが、現時点では為替レートを反映した値段になっているという。今後、人民元レート上昇が続けば、アップルのレートが改訂されるまで不利な状態が生じる可能性もあるだろうが……。
この人民元決済に関して興味深い指摘も寄せられている。第一に中国国産のクレカシステム・銀聯カードが決済手段から外されたこと。ある銀聯関係者によると、1年以上前からアップルとの交渉を続けていたというが、協議をまとめられなかったという。果たして何がネックとなったのだろうか。
もう一つの問題は、中国の銀行と取引し、人民元決済を導入することで、iTunes Store 中国は中国政府の影響下に置かれたとの指摘だ。従来はiTunes Store 中国を名乗りながらも、中国政府及びその法律とは距離を置いた外国のサービスという位置づけだった。今後は言論検閲を筆頭にさまざまな規制が科される可能性もありそうだ。
それにしても、最初に銀行口座振り込み制度を用意しますとアナウンスしてくれていれば、これほどの騒ぎとならなかったはず。IT企業らしいゴーイング・マイウェイと言ってしまえばそれまでなのだが、なんとかならなかったのだろうか。
My Educational Chinese on Bleaking News / SATOSHI TOMIYAMA
*iPhoneキャプチャー画像は新快報の報道。
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