中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年11月20日
成長するアセアン経済に対して、アメリカと中国という両大国が、地政学的覇権の思惑もあって接近を強めているが、アセアン諸国もしたたかに双方と付き合う体制を広げつつあるようだ。
Malaysia's Flag / .ET.
■ASEANでシンガポールに次ぐ経済発展を遂げた国
マレーシアは、アセアンの中にあって都市国家シンガポールに次ぐ経済発展を遂げている国だ。マレーシア経済は、人口の3割を占める華人が多くを担っている。余談だが、クアラルンプールのホテルで空港へ経つ朝、時間通りタクシーが来なかった。
ホテルに駐車している華人の運ちゃんいわく、「マレー人と約束したって来ないよ」と言って、時間のない中、その運ちゃんに高い値段で空港まで送ってもらったことがる。
アセアンの国々では、華人、華人の末裔、華僑が、経済の実権、ひいては政治的利権を握っている国が多い。マレーシアやシンガポールだけでなく、タイやフィリピンでも同様だ。とはいえ、中国との関係を見れば、南シナ海の領海問題などに見られるように、政治的には決して近くなく、警戒する面が多い。中国とは政経分離で付き合う、といったところか……。
マレーシアにおいても、中国と隣接しているわけではないが、経済的なつながりを強めている(一方でアメリカがイニシアチブを取ろうという「TPP」の参加国でもあるが)。
Event | Hari Malaysia 2011 / esharkj
■対中貿易額、15年までに8兆円近くを目標に
マレーシアのナジブ首相は、10月広西省南寧(ナンニン)市で開かれた第8回中国アセアン・エキスポにおいて、西欧経済の不調を片目で見ながら、「中国との貿易額を2015年までに1000億ドル(約7兆7100億円)に到達させたい」と述べている。
昨年2010年の両国の貿易額は、前年比19%増の742億ドル(約5兆7200億円)だった。今年2011年は、7ヶ月間で、月平均72億ドル(約5550億円)、前年同期比22%の伸びを見せている。
年間1000億ドルは、そう難しいターゲットではないだろう。この数字は、中国側発表の数字と思われる。マレーシア側の数字はもっと小さいが、香港への輸出入が別になっているのだろうか?
■合弁、工業団地、経済的連携を強める馬中
中国はマレーシア最大の貿易相手国であり、中国にとってもマレーシアは、アセアン諸国内でシンガポールに次ぐ第2位の貿易相手国である。電気製品、パーム・オイル、ゴム、機械、鉄鋼製品などが主要な貿易品だ。
両国は合弁でスリランカに風力発電所を作るといわれる。中国の自動車メーカーとマレーシアの国産自動車メーカー・プロトンも、合弁を開始するという。
両国間の直接投資も増えている。中国のマレーシアへの直接投資は、前年から62%も増え、2010年に200億ドル(約1兆5400億円)を超えた。広西省欽州 (キンズー)市には、中国マレーシア工業団地が建設される。国と国とのプロジェクトであり、55平方kmの土地には、両国の産品を製造する工場が立ち並ぶそうだ。これがうまくいけば、今度はマレーシア内にこのような工業団地を建設していく予定だという。
マレーシアは、中国との経済的結びつきを着実に強めている。
*当記事は2011年11月19日付ブログ「チェンマイUpdate」の許可を得て転載したものです。