• お問い合わせ
  • RSSを購読
  • TwitterでFollow

東莞は燃えているのか?ナイキ工場の労働者数千人がデモ、政府庁舎を囲む―中国

2011年11月21日

2011年11月17日、ナイキやニューバランスなど世界的シューズブランドのOEM生産を引き受ける広東省東莞市黄江鎮の工場労働者数千人が市内でデモ行進し、鎮政府庁舎を包囲。対暴動警察が出動する騒ぎがあった。


pic of the week #7
pic of the week #7 / graffiti.freiburg

*image


■靴工場のストライキ、デモ

従業員1万人がスト・デモ=警官隊と衝突-中国の靴工場
時事通信、2011円11月18日

【香港時事】18日付の香港各紙によると、中国広東省東莞市にある台湾系企業の靴工場で17日、約1万人の従業員が人員削減やボーナス引き下げに抗議してストとデモを行い、警官隊と衝突した。従業員多数が拘束され、数十人が負傷した。

中国広東省、靴工場で大規模スト
日本経済新聞、2011年11月18日

ストが起きたのは「ニューバランス」などのブランド品の製造を受託する台湾系の「裕成製靴廠」。経営者は従業員に対し、受注減で経営困難に陥っていると訴えていたとされる。広東省は欧米景気の減速で輸出が急減する一方、物価高で生活費の上昇が続いており、同様の争議が広がる恐れがある。(広州支局)

20111121_広東省_東莞市_ストライキ_ナイキ_2

デモを実施したのは、世界最大の靴OEMメーカーの一つ、台湾・宝成工業傘下の裕成製靴廠。デモ参加者の数は7000~1万人とメディアによって異なっているが、相当な数であることは間違いない。

事件初期は南方日報、羊城晩報など現地メディアも報じていたが、その後報道が禁じられたようで、続報は流れていない。事件の発端についても、羊城晩報は「残業停止」、南方日報は「ボーナスの業績連動性」と報じており食い違いを見せている。

20111121_広東省_東莞市_ストライキ_ナイキ_3

ちょっと面白いのがRFAの報道。取材に答えた労働者が「週5日、1日8時間しか働かせてくれないんだぜ!」と文句を言っているのだ。残業がないと稼げない以上、当たり前の反応なのだが、長時間のブラック労働がいかに常態化しているか、そして労働者自身もその状況を「ある意味」望んでいることを示している。

というわけで、事件の詳細についてはまだわからない点も少なくないのだが、工場側が労働者の実質的な実入りを減らす新制度を導入しようとして反発を食ったという流れのようだ。中国の工場労働者の給与だが、基本給は最低賃金ぎりぎりにされているが、その上に残業代、成果給、皆勤手当などが上乗せされていくという方式が一般的。「上乗せ分がカットされたら収入は半分になっちゃうよ!」との労働者のコメントも掲載されていた。

20111121_広東省_東莞市_ストライキ_ナイキ_1


■東莞市の危機

「欧州債務危機が中国に与える影響やいかに?」「世界経済低迷の波に中国も巻き込まれるのでは?」云々と取りざたされ、とりわけ労働集約型輸出製造業への影響が懸念されている。その先駆けとなった温州危機は政府の強力な対策により小康状態となったようだ。しかし、その一方でメディアの注目は輸出産業の中心地・広東省へと移ってきた感がある。
(温州危機関連記事:闇金スポンサーは一般市民=銀行預金5兆円が地下経済に流入か―中国

20111121_広東省_東莞市_ストライキ_ナイキ_8

先日、香港紙・明報は今年1~10月に倒産した広東省東莞市の外資系企業が450社に上ると報じた(RFA)。うち80%超が台湾、香港系だという。上述の裕成製靴廠のように、香港・台湾系メーカーには輸出中心のOEMメーカーが多い。

20111121_広東省_東莞市_ストライキ_ナイキ_7

東莞市対外貿易経済協力局は、「2010年も585社が倒産した。金融危機の2008年には865社、2009年には675社が倒産している。今年の状況が特に深刻というわけではない」と否定。中国商務部も16日の定例記者会見で、東莞危機説を否定している(中国新聞網)。確かに数万社の外資系企業が雲集する東莞市で500社が倒産したとしてもごくごく自然の話なのだが、倒産数の公式統計には表れない水面下で問題は広がっているのではないかと懸念する声もある。

16日の中国商務部会見の翌日に裕成製靴廠のデモがあったことで、東莞市の危機は改めて印象づけられた。


■21世紀版ラッダイト運動

中国製造業は輸出需要の低迷と同時にもう一つの問題を抱えている。物価上昇に伴う労働コストの上昇圧力だ。中国政府も賃金引き上げを指示する姿勢を示しており、広東省では来年1月にも全省で平均16%の最低賃金引き上げを予定している。

20111121_広東省_東莞市_ストライキ_ナイキ_9

「民生」重視(生活重視)の大号令の下、ある共産党幹部は「今後5年以上、賃金は年10%以上のペースで上昇する」との予測を示すなど、政府による賃金引き上げ支持の姿勢は一貫している。安い人件費が頼りの労働集約産業にとってはなんとも厳しい状況だ。

20111121_広東省_東莞市_ストライキ_ナイキ_11

iPhoneやiPadなどアップル製品の組み立ててで知られる世界最大の電子機器OEMメーカー・フォックスコンは四川省など人件費の安い内陸部への工場移転を進めているが、さらに2012年には30万台の工業用ロボットを生産ラインに投入する計画を発表している。中国本土120万人(!)の労働者をリストラしないとは言っているが、待遇悪化などの問題が起きれば、ロボット打ち壊し暴動が起きてもおかしくはなそうだ(長江日報)。

20111121_広東省_東莞市_ストライキ_ナイキ_10

裕成製靴廠も内陸への移転を交渉カードとしてちらつかせたとの報道もある。出稼ぎ農民の皆さんの出身地はもともと内陸部にあるわけなので、故郷に近いところで働けるわけだが、その分給料も下がる上に、第二世代農民工と呼ばれる若い出稼ぎ農民たちは故郷への思い入れが薄く、むしろ都市をアイデンティティとしている。そう簡単には移転に応じないだろう。

先日の記事「官の暴力と民の暴力=弱き労働者を助ける同郷会、兄弟会というマフィア」でもご紹介したが、今、中国の労働者には、急激に「暴力という抵抗の作法」、すなわち中華人民共和国の法律では違法となる反抗のマニュアルが広まっている。もし広東省の製造業が急速に移転する動きが広がれば、デモやあるいはもっと過激な行為で抵抗しようとする動きも十分考えられそうだ。
20111121_広東省_東莞市_ストライキ_ナイキ_6


トップページへ

 コメント一覧 (1)

    • 1. トリーバーチ ポーチ
    • 2013年05月15日 21:48
    • モノグラムと悩みましたが、モノグラムはやっぱりヌメ革の染みや汚れがだんだん気になってくるので、汚れの目立たないダミエにしましたo(^-^)o

コメント欄を開く

ページのトップへ