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2011年11月22日
东莞富盈假日酒店 / llee_wu
2011年11月、証券市場週刊が伝えた。
■若き国有企業トップの不正蓄財術
上海臨港産業エリア。同区画の建設を担当している国有企業・上海臨港経済発展(集団)有限公司副総裁、臨港建設発展有限公司代表・理事長の戴偉中が収賄側の主役となる。2004年、41歳の若さで国有企業トップの地位を得た戴氏は、その後の7年間、不正蓄財に励み、逮捕時点で住宅8軒を所有していた。
戴の金づるとなったのが、上海図鵬建設発展有限公司の朱水忠代表。会社登記資料によると、建材・内装材料の販売を扱う会社だが、臨港産業エリアの建設事業に食い込み、工事を行う資格も持たぬまま、駅や道路の建設にたずさわっていたという。
■最初のせびり
2人が出会ったのは2005年の旧正月明け。一緒に食事をすることになったが、まだ緊密な関係ではなかったと朱は話している。食事の隻で、戴はあるマンションを1室買おうと思っているのだがと話を振り、後日、朱と一緒に見学することになった。
見学の数日後、朱の下に戴からの電話がかかってきた。「あのマンションを買いたいんだけど、460万元(約5520万円)ほど予算が足りないんだよね。持ってる株や家を売らないとダメっぽいなー。いやー、困った困った」、と。
これを聞いて、朱もさすがにぴんと来た。「株も不動産も値上がりするので、今売るのはもったいないですよ。お金のことはお任せください」と返事すると、必死で金をかき集めて、戴の口座に振り込んだ。
「また別のマンション買おうかと思って。でも金がない」「今度は駐車場を買うつもり。でも金がない」と再三続く戴のせびり。それに応え続けているうちに、朱と戴は太いパイプでつながれるようになった。マンションほどの大きな買い物ではなくとも、米国旅行プレゼント、海外出張前にお小遣い、さらにはiPadからソニーのVaioまで戴の要求に、朱はせっせと応え続けた。
■名義借りと孫請け
プレゼント攻勢で太いパイプを築いたとはいえ、朱の会社は公共工事の入札資格を持っていない。正規の手段では入札に食い込めないのだが、そこで使われたのが「挂靠」(正規企業へのぶら下がり、名義借り)という手法だった。南匯水利、宝冶建設、長業建設など正規の建設資格を持った企業に入札してもらい、工事はまるまる朱の会社に投げてもらうという手口。下請けの朱の会社は「挂靠包工頭」(ぶら下がり請負業者)と呼ばれる。
名義を貸してくれた会社には受注金額の最大1.5%程度を「管理費」名目などで渡し、残る金は朱の会社が受け取る。名前を貸す国有企業側にとっても、何もしなくても金が入ってくるのだから悪い取引ではなかったのだろう。また、「工期を急ぐ」などの理由で正規の入札手続きが実施されない場合には、朱の会社が直接受注するケースもあったという。
■「偉い人の一筆」ってすごい効果です
裁判ではもう一人、戴に貢いでいた人物の存在が明らかになっている。ある政府幹部の秘書を勤めていた賈という男だ。恐らくその政府幹部が書いたものだろうが、「戴偉中くんへ。賈くんをよろしく」という内容の書状をもっていたという。
その効果はてきめんで、2005年から2010年にかけ、2億3700万元(約28億4000万円)もの建設プロジェクト受注に成功している。賈が経営する会社もやはり正規の入札資格を持っていないため、「挂靠」(名義借り)方式を使っている。
プレゼント攻勢で得た見返りではないが、「やはりお礼をしなければ!」と考えた賈。米国に留学している戴の息子が帰国した際に一家全員を食事に誘い、「息子へのお小遣い」名目で計2万ドル(約154万円)を渡している。
ちょっと面白いのは賈は起訴されていないという点。偉い人の後ろ盾はやはりすばらしい。