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信託企業による「草の根民間金融」への融資を禁止=中国当局の危険な判断

2011年11月24日

2011年11月24日、財経網は、中国金融当局が信託企業各社に対して小口融資企業、担保企業、抵当融資企業への融資を中止するよう命じたと報じた。


Finance district
Finance district / Jo@net


■中国経済の不透明感

23日、HSBCが発表した11月中国購買担当者景気指数は48と、景気判断の分かれ目となる50を下回った。リーマンショック後の2009年3月以来、2年8カ月ぶりの事態で、中国の景気悪化懸念がより深まるニュースとなった(ロイター)。

中国経済の先行きが不透明感を増していることは事実だが、中国経済全体にどれほど影響するかについてはまだまだ未知数、先日世界銀行が発表したとおり2012年も成長が続くとの見方も強い。だが、少なくとも中小企業、零細企業の資金繰りや輸出中心の労働集約型製造業の不況感、破綻リスクが高まっていることは間違いない。


■超政治主導の国

夏から秋にかけ注目を集めた温州危機では、経営者の夜逃げが相次いでいると盛んに報道され、政府は強力な救済策を導入。銀行に中小企業向け融資を拡充させ、貸し渋り、貸しはがしを厳しく規制する窓口指導を実施した。
(関連記事:銀行が絶対に「貸し渋り」できない中国政府の智慧=温州経済対策を読む

「超政治主導の国」中国で政府大号令の効果はあらたかだ。郵儲銀行の小口融資残高が10月末時点で7000億元(約8兆4000億円)を突破するなど、各銀行は政府の指示に従っている(23日付財経網)。もっともそれが素直に喜ばしいかというとそういうわけではない。

銀行はなにも嫌がらせのために中小・零細企業への融資を渋っていたのではなく、うま味が少なかったりリスクが高かったりするので敬遠していたのが実情だ。図体の大きい銀行では中小・零細企業の資産や信用をチェックすることは難しい。政府大号令で供給された中小・零細企業向け融資の不良債権率が高まり、新たな金融リスクになると懸念する声も上がっている。


■金融行政が管理できない小口融資企業、担保企業、抵当融資企業

借りる側にしても銀行は敷居が高いもの。先日、紹介した福建省の伝統民間金融・頼母子講もそうした理由で重宝されていた。
(関連記事:お茶産地で「民間金融」頼母子講が連鎖破綻=中国に忍び寄る足元の経済危機

今回の「融資禁止令」で名指しされている小口融資企業、担保企業、抵当融資企業も、機動力を生かして中小・零細企業向け小口融資業務を続けていた業種である。

小口融資企業(中国語で「小貸公司」)は小口融資を行う企業。担保企業(「担保公司」)は借金をする際の保証人を代行する企業。抵当融資企業(「典当行」)は簡単にいってしまえば質屋。いずれも中国の草の根金融を支える役割を果たしているが、金融当局の管理下にはない。一般企業として登記されている存在だ。


■金融当局は迷走していないか?

金融システム全体の健全性を保つために、大手金融機関である信託企業が怪しげな小規模民間金融に融資して焦げ付かせないように、という金融当局の親心なのだろう。しかし、現実にこうした民間金融が草の根を支えていたわけで、信託企業の資金が断たれれば中小・零細企業の資金繰りはさらに悪化する可能性もある。

怪しげな民間金融から、正規の銀行の小口融資に移行させて、融資や債務不履行の状況をチェック可能なものにしたいというのが当局の狙いではないかと推察するが、草の根民間金融ほどの機動力を銀行に期待するのは酷というものだろう。

これまで基層金融の整備を怠ってきたつけが回ってきているわけだが、危機のさなかに整理するよりも、とりあえず状況が治まるまでは民間金融の能力を生かし、その後チェック可能な正規のシステムに移行させるほうが安全なようにも思える。そういうわけで、どうも迷走気味の規制のように思えるが、果たしてその成否やいかに。


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