中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年11月27日
*画像は財新網の報道。
■お祭り総選挙の世論調査
中国時報は22日から24日まで連日(!)、世論調査を実施しているが、馬英九陣営の支持率は44%、42%、40.7%と低下。一方、蔡英文陣営は39%、40%、40.3%と上昇し、ついに0.4%差に迫った。
調査は21日からスタート。毎日350人の有効回答を集め、3日ごとに結果を発表していくという。サンプル数の少なさ、連日の調査ということを考えても怪しげとしか言うしかない調査だが、やれ上がった下がったとお祭り選挙を楽しむためのツールとしては重要である。
なお調査によると、調査対象者の90%が投票の意志があると回答。すでに投票する候補を決めた人が82%に上る。第三の候補である親民党の宋楚瑜主席も10%の支持率を集めており、その動向が選挙の鍵をにぎりそうだ。
■潮目を変えた2つの事件
怪しげな世論調査とはいえ、ほんの1カ月前までは馬英九圧勝が伝えられた状況から大きく変化していることは間違いない。潮目が変わった原因について日本メディアがさっぱり報じてくれないので、台湾については不勉強この上ない身であることを承知でしゃしゃりでて解説してみたい。
要因の一つは馬英九総統の失言だ。記事「大怪獣と戦う萌えキャラ・蔡英文=子ブタさん貯金箱で募金集め」でご紹介した話だが、馬英九総統は中国共産党が望む平和協定について、「交渉を排除しない」と発言。「このまま中国に飲み込まれるのではないか」との台湾市民の不安に火を着けた。慌てて「平和協定を結ぶ前には住民投票を実施する」と宣言したが、その影響は少なくないようだ。
そしてもう一つの要因となっているのが、馬英九総統の「黒い交際疑惑」だ。11月17日付『壱週刊』は「馬英九総統が地下カジノのボスと会っていた」とのスクープ記事を掲載。9月10日に嘉義市の黄敏恵市長の仲介で、地下カジノのボス・陳盈助と密会していたことを伝えた。民進党も「黒い疑惑」について集中砲火を加えたが、「さわやか清廉キャラ」が売りだった(この4年でだいぶくすんだ感もあるが)馬英九総統にとっては相当の痛手ではないだろうか。
馬英九陣営は、『壱週刊』及び民進党を告訴、それぞれに200万台湾ドル(約509万円)の賠償と台湾4大新聞への謝罪文掲載を求めている(国民党ニュースネットワーク日本語版)。
■余談:ネット選挙も資金力勝負
これがポスト・オバマ時代の選挙か、と感嘆させられるのが台湾総統選のネット利用。フェースブックなど各種ソーシャルメディアを駆使するのはもちろんのこと、ウェブ広告も大々的に利用されている。
資金が潤沢な総統候補たちはまだいいが、同時に実施される立法委員選挙候補者の皆様は「また一つ、お金が必要なツールが増えた……」とがっかりなのではないか。ウェブ広告のほうが効果が高いから、既存メディアの選挙広告を減らそうという流れになれば話は別だろうが。
そうした中、少ない資金でも効果的な広告を打てると注目を集めているのが行動ターゲティング広告だという(中国時報)。ネットユーザーの年齢や性別、職業、興味などにあわせてターゲットを絞り込むことで、より効果的な広告を打てる技術だ。従来のウェブ広告と比べ、クリック率は5倍になるとのこと。一部候補者は今回の選挙戦で採用する意向を示しているという。