■タイの医療システムと医療保険の日本とのびっくりする違い■
*当記事は2011年10月23日付ブログ「チェンマイUpdate」の許可を得て転載したものです。

タイの医療保険、医療制度をいろいろ調べると、日本との大きな差にびっくりする。
■タイの医療保険
タイの公共医療保険は、
(1)民間企業従業員に対する社会保障の一環としての医療保険制度(1991年導入)
(2)公務員に対する医療保険
などはあるが、農民や、自営業者に対してのものは存在しない。金のある人間は、民間の医療保険を買う。これらの保険もほとんどが、加入者1人に対するものだから、家族は基本使えない(軍人・警察は別と聞くが……)。
つまり、国民皆保険ではない為、「健康保険」は限られた人のものである。そこに出てきたのが、2001年にタクシン首相が導入した、いわゆる「30バーツ(約74円)医療」、国民医療保障制度である。ただし、指定された地域の病院へ行き、何時間も待たされなければいけない。診察も簡単なものだ。
■頼りない民間医療保険タイは所得格差の大きな国である。金持ちは民間の医療保険(AIAとかBUPAとか)に入る。そして、私立の高級病院へ行く。なお、余談だがタイの保険は歯科医療はカバーしていない。聞いてみると、歯は24本もあり、いつも金がかかるからだと言うが……(?)。
民間保険も、入院治療(+事故治療)が中心である。通院治療オプションを加えても、一日500バーツ(約1240円)などの限度額×1年30日の限定=15000バーツ(約3万7000円)が保険料に上乗せされるだけなので、あまり意味がない。
また、65歳を超えると保険に入れない。病気の確率が急速に高まるからだ。もっとも、65歳時の余命平均は、日本の20年近くに対し、タイでも10数年はあるはずだが......。
■高額な日本の健康保険、上昇する個人負担日本の国保(国民健康保険)は大変である。36兆円にのぼる国の医療費のうち、4割近くが高齢者に対するものだからだ。日本では国民一人当たり26万円もの医療費が使われている。
これはタイ人の年間平均所得の8割方が消えてしまう額だ。日本は薬や機材が高額な為、薬剤だけで10兆円を超えている(全医療費の3割)。タイの薬は処方箋なしでも安く提供されている。
日本の医療費負担の内訳は、本人が保険料負担分も含めて45%、国・地方が33%、事業主が22%負担する形になっている。国の負担軽減のため、本人負担が上がってきたのだ。
■タイの1人当たり医療費は日本の18分の1
タイにおける医療費は、4分の3が公的負担で、プライベートな負担(個人・企業)は4分の1にすぎない。個人は医療費にあまりお金を使わない(使えない?)。
日本に比べて、タイは医療費にあまり金はかけない、かけれない。1人当たりの医療費は購買力平価換算だと330ドル(約2万5400円)ほどだが、為替レートで換算すると、165ドル(約1万2700円)、約5千バーツ(約1万2400円)ほどとなる。日本と比べると、所得格差を上回る18分の1という大きな開きである。
もっとも、日本は医療に金をかけすぎなのかもしれない。高齢者は体が痛いので、しばしば病院に行く。タイは歳をとって死にそうになれば、やや表現がオーバーかもしれないが、そのまま自然にまかせてしまう。対して、日本はチューブを挿入し、最後まで延命をはかる。
OECDの2009年の統計によれば、日本の医療費のGDPに対する比率は8.3%となっている。タイはその半分のGDP比4.1%である。
■病院へ行く日本人、薬屋へ行くタイ人タイでは体調が不調だと、クリニックや病院に行くよりも薬屋へ行って、薬を買って直す。薬(ヤー)は安い。街角のいたるところに薬屋がある。病院へ行って長い時間待たされ、高い金を払っても、多くは街角の薬剤師の見立てと、似たり寄ったりなのかも知れない。
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タイの健康保険事情(世界の健康保険)
シッコ Sicko(CINEMA TOPICS ONLINE)アメリカの国民健康保険を嫌がってるのは誰か?(ベイエリア在住町山智浩アメリカ日記、2010年4月1日)
*当記事は2011年10月23日付ブログ「チェンマイUpdate」の許可を得て転載したものです。