中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年11月28日
Sony Trinitron / Antifama
2011年11月28日、新華網が伝えた。
■「文化体制改革」の大号令と大混乱
今年10月に開催された第17期中国共産党中央委員会第6回総会(6中全会)では、「文化体制改革」が主要テーマとなった。「中国といえば言論弾圧でしょ」との決めつけも少なくないが、それだけではない。「文化体制改革」が及ぶ範囲は多岐にわたる。
(関連記事:「文化体制改革」が意味するものとは?6中全会を考える―中国)
言論統制以外にも、売れるコンテンツ産業の育成、将来の淘汰を見越した不要な機関紙の商業化改革、民間出版社の書籍出版認可規制緩和、過度な商業主義に走ったテレビ局への規制などが進められることになる。なにせ「6中全会・文化体制改革」という錦の御旗を手に入れたのだから、各主管部局は関連づけられそうなことは全部、「6中全会」と関連づけて、活発な動きを示している。
(関連記事:「公的出版機関の企業化」=新たな出版改革でゴシップ紙大増殖か)
そういうカオス的状況が生まれてくると、中にはそれぞれの方針が相反する矛盾も生まれてくる。ドラマ広告規制を含む「娯楽制限令」がまさにそれで、「売れるコンテンツ産業の育成」という目標と相反しているのではないか。
■娯楽制限令
さて、「文化体制改革」後の目玉の一つと言えるのが、「娯楽制限令」(限娯令)である。実は6中全会前からも「娯楽制限令」という呼び名はあったのだが、まとまった法律や通達ではなく、個々の規制や口答指示などを総称したもの。テレビ業界関係者も「それは娯楽制限令にひっかかるからダメ」的な言い方をしつつも、「娯楽制限令」が具体的にどういう内容なのかは知らないという、不思議な状況にあった。
だが、6中全会を期に明文化され、かつ規制内容の強化が図られることとなった。「ドラマの間にコマーシャルを挟むこと禁止」もその一環だ。中国のテレビ局は、国家級の中国中央電視台(CCTV)だけで10チャンネル以上を保有。その下にも北京テレビなど省・市・自治区レベルのテレビ局も複数チャンネルを持っている。その下にもテレビ局を持っている自治体があるなど、日本では考えられないぐらいチャンネル数が多い。
となると、日本のCS的なダメチャンネルも少なくない。人気ドラマの再放送を流しては(時には版権もとらずに!)、ドラマの間をぶちぶち切ってえんえんとコマーシャルを流しているかと思うと、怪しげな携帯電話、健康食品・グッズ、薬品のコマーシャルをだだ漏れさせているケースもある。
そういうカオスを規制してくれるならば大歓迎なのだが、今回の「『ラジオテレビ広告放送管理弁法』の補充規定」は、そんなあこぎなCMを流していなかった、まっとうな局にまで及ぶということで、ちょっと恐ろしい。一説にはテレビ局の損失は200億元(約2400億円)に達するとも言われている。その分、ドラマの制作費が削られてしまえば、「文化強国」の道が遠のくのではないだろうか。
■バラエティ規制と抜け道=兵士オーディション番組「士兵突撃」
「『ラジオテレビ広告放送管理弁法』の補充規定」の前に明文化された「娯楽制限令」には、「テレビ衛星チャンネル・総合チャンネル番組管理の更なる強化に関する意見」がある。こちらも来年1月1日より施行される。その内容は以下のとおり。
(1)午前6時から午後12時までの間に、各局最低でも2時間以上、ニュースを放映すること。
(2)午後6時から11時半の間に2種類以上の自社制作ニュース番組を放映すること。1番組の時間は30分以上とする。
(3)中華民族の伝統である美徳と社会主義の革新的価値体系の思想道徳建設番組の新設
(4)
「婚恋交遊」(ねるとん)
「才芸競秀」(かくし芸大会)
「情感故事」(トレンディドラマ)
「遊戲競技」(「VS嵐」「SASUKE」のような番組)
「総芸娯楽」(コント、お笑い)
「訪談脱口秀」(トークショー)
「真人秀」(リアリティ番組。アメリカンアイドルをパクった伝説的オーディション番組・超級女声もこのカテゴリー)上記番組については、全国放送衛星チャンネルでの放映数は9番組まで。各テレビ局が放映できる上述の番組は週2番組まで。毎日午後7時半から10時までのゴールデンタイムに放映する場合、1番組90分以内とする。
(5)「 ニュース番組、経済番組、文化番組、科学教育番組、子供向け番組、ドキュメンタリー」を増やすこと。
(6)また各チャンネルは中華民族の伝統と美徳、社会主義の核心的価値体系を広める思想道徳番組を最低1番組は放映すること。(関連記事:バラエティ番組がお茶の間から消える!中国共産党の娯楽制限令(水彩画))
(関連リンク:人民網)
20年前、30年前だと、まだチャンネル数も少なかったのではないかと思うのですが、いつからあんなに増えたのでしょう?
ところで、今回の記事の「その内容は以下のとおり。」以下、(6)の内容は(1)と(2)と重複しています。
あと、以前の記事のタイトルで「加藤藤嘉一」となっているものもありました。