中国、ラオス、ミャンマー、タイの4カ国によるメコン川合同パトロールが2011年12月15日から始まることが決まった。

Mekong river and laos thai border / jesssloss
■まとめ:中国輸送船襲撃からメコン合同パトロール部隊発足まで
メコン川で合同パトロール 中国など4カ国、12月から
新華社電によると、中国とラオス、ミャンマー、タイ4カ国の警備当局者らの会議が26日、北京で開かれ、12月中旬からメコン川で4カ国による合同パトロールを実施することを決めた。警備能力強化のため、中国はラオスとミャンマーに装備や要員研修での支援もする。
10月5日、メコン川タイ北部流域で、中国輸送船が襲撃される事件が起きた。中国人船員13人が目隠しされ手を縛られた状態で銃殺され、遺体を川に捨てられるという惨事となった。「中国の弱腰外交が生んだ悲劇」との政府非難も高まり、またメコンの水運に従事していた中国人が大挙撤退するという状況へと発展した。
(関連記事:「タイ軍兵士が中国人13人を惨殺した=メコン川中国人船員殺害事件の犯人逮捕」2011年10月31日)
中国はラオス、ミャンマー、タイと国際河川メコン川の安全確保に向けて協議を重ねており、4カ国による合同パトロールが実施される見込みだと報じられていたが、ついにパトロール開始の日時も決まった。
(関連記事:「1000人規模の武装部隊を東南アジアに派遣=メコン川の安全確保―中国」2011年11月9日)
27日付
ボイスオブアメリカ中国語版によると、従来報道の内容は最終的にほぼ盛り込まれたようだ。
部隊の規模は約1000人。中国だけで1000人なのか、4カ国合わせて1000人かは不明だ。中国からは人民解放軍ではなく、武装警官が派遣される。また、中国はライフル弾を防げる厚さ1センチの防弾壁を両側に設置した改造商船5隻を準備した。
このほかに中国はラオス、ミャンマーの部隊に武器を提供し、訓練も担当することが明らかにされている。合同パトロール部隊はメコン全域を巡回するのではなく、麻薬密輸組織が活動する重点地域に駐屯、パトロールを実施する。

Mekong / duhangst■香港メディアの反日記事
中国が海外に部隊を駐留させるというのは、なにげに大きなトピックだ(批判を配慮してだろうが、武装警官の派遣となったが)。その割にはあまり日本メディアの扱いは大きくないように感じる。
その代わりといってはなんだが、過激な反日報道で定評のある香港・太陽報がすごい記事をあげてくれている。
メコン3国への進軍=日本が中国の裏庭を荒らす
南シナ海問題で、フィリピンとグルになって悪さをした日本(海洋安全保障協力の合意を指す:Chinanews)。今度はその魔の手をメコン流域に伸ばし、中国西南部に致命的な一撃を与えようとしている。中国の周辺情勢は全面的に悪化しているのだ。米・日・印の包囲網は日増しに厳しいものとなっている。
というのが冒頭部。「メコン3国への進軍」とは中国による武装警官隊派遣のことではなく、日本の悪巧みを指している。なんかそんなことしたっけ?と不思議に思ったのだが、12月初頭の玄葉光一郎外相によるミャンマー、タイ、カンボジア3カ国訪問を意味しているらしい。いや外相送るだけで進軍とか言われても……。
記事は「メコン川の合同パトロールは、東南アジアにおける中国勢力の拡張だとして西側諸国は警戒している」と続け、米国とミャンマーの関係改善は「民心を金で買う行為」だ、ミャンマーでの中国によるダム建設は生態環境と経済を破壊するものと米国は騒ぎ立てまくっていると書き立てる。
そして、日本の話。
米国の従属国である日本は、米国の「アジアへの帰還」戦略と歩調を合わせている。特に野田内閣は極度の親米派であり、対中戦略でも米国の言うがままに動いている。中国を妨害する活動は主の米国よりも活発なほどだ。今や米国に続いて、金の力でメコン流域に侵入しようとしているのだ。メコン川の安全とダム問題は、米日の介入により、メコン諸国と中国が争う焦点とされるであろう。
「米国の犬」呼ばわりぐらいは見慣れているのだが、この後がすごい。
日本は大地震と放射能汚染により、その生存空間が著しく圧迫されている。いかに国際的空間を確保するかが東京政府の喫緊の課題だ。東南アジア諸国こそ、日本が影響を拡大し資源を略奪する重要目標となるだろう。日本にとってメコン流域への進出は、中国封じ込めの策であると同時に、東南アジアに進出し、第二次世界大戦で実現できなかった「大東亜共栄圏」を現実のものとするチャンスなのである。

Imperial Japanese Army's Kewpie doll.
メコン川流域の風雲は急を増しているが、これは中国周辺の外交環境悪化の縮図に過ぎない。中韓の蘇岩礁(離於島)をめぐる争い、中日の釣魚島(尖閣諸島)問題、そして中国と東南アジア諸国の南シナ海、メコン川問題、さらには中印の蔵南(アルナーチャル・プラデーシュ州)問題。北から南、東から西へと広がる係争のひもは、今、中国の首を締め上げている。
妄言のご静聴、ありがとうございました。と太陽報に代わって読者の皆様にお礼をいいたくなるような内容だ。
まあ、しょせん香港メディアの「売らんかな」的ネタ記事でしかないのだが、困ったことはこの手のロジックが次第次第に環球時報や中国ネトウヨ(憤青)に共有されていくこと。一部の人々の脳内では、「大東亜共栄圏の悪夢がまもなく実現してしまう……。ぴんちぴんち、中国ぴんち」と警報が鳴っていることだろう。
うーん、どうにかならないものだろうか。
関連記事:
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