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2011年11月30日
*画像は奇芸の旧トップページ。
*画像は新しいトップページ。左上のロゴが変わっている。
百度のネット動画共有サイト・奇芸については、以前も何度か取り上げたことがある(関連記事参照)。優酷や土豆網などYoutube型のユーザーがコンテンツ(アクセスを集めているのはほとんど海賊版コンテンツだが)をアップするサービスではなく、正規版権を持つコンテンツのみを放映するHulu型サービスだ。
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■「政治的問題」でサイト名を変更か?
その奇芸に異変が起きた。28日、突然、サイト名を「愛奇芸」に変更したのだ。ドメイン名も「qiyi.com」から「iqiyi.com」に変更された。ネットサービスの命とも言える知名度を向上させるため、百度は莫大な金を突っ込んでいる。私も北京を訪れた時、地下鉄駅を埋め尽くす「奇芸」広告に驚いたことがある。
似た名前とはいえ、せっかく知名度を稼いだ名称、ドメイン名を変更するのは異例の処置だ。しかも長いドメイン名を覚えやすく短くするのならまだしも、従来より長くするとは一般的には考えられない。
中国ネット民も不思議に思ったようで、改名の理由についてマイクロブログで話題になっているという(東方日報)。曰く、「奇芸(qiyi)」という発音は「起義(qiyi、武装蜂起の意)」に通じる。リビア、シリアと「起義」が相次ぐなか、政治的に問題となったのではないか、と。
個人的にはありそうな話だと思ったのだが、反論が鋭い。すなわち「愛奇芸(愛起義、武装蜂起を愛する)」のほうがずっとやばいだろうと指摘されている。
■種明かし
さて、皆の疑問に対する正解が明らかにされている。
南方網によると、問題はお役所の許認可を正しく取っていなかったことにあるという。中国で動画配信サイトを運営するためには「ネット視聴許可証」という書類が必要となるが、奇芸は百度ビデオの認可証を使って運営していた。しかし、ドメインが異なる場合は別に許認可を得る必要があったということで、あわててドメイン名を変更し新たに認可を申請したという次第だ。
まだ腑に落ちないところもあるが、とりあえず「起義」が問題ではなかったのはちょっと残念。いい笑い話だったのだが。それにしてもお役所への申請をさぼっただけで、百度は大変な被害を受けてしまった。「百度ビデオの許可証あるから、もう申請しなくてもいいよね」と判断した責任者がいまごろどんな処罰を受けているか、想像するだに恐ろしい。