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2011年11月30日
■上座部仏教伝来の地
スリランカ(旧セイロン)は、タイなどへの上座部仏教伝来の地である。しかし、近年、「タミール・タイガー」の名で知られるように、反政府軍による内乱が絶えなかった。
インドの南端から見えるセイロン島は、6万5600平方km。北海道(7万8000平方km)の84%の広さの土地に、2000万人が住んでいる。1972年より採用された国名「スリランカ」の接頭辞スリ(聖なる)は、タイの地名の頭に来るシー(シー・サケットやシー・チェンマイなど)と同根だろう。
DSCF0524 / Luca - "Bluesky"
■極小の島国で四半世紀続いた民族動乱
北インドから来たといわれる「シンハラ人」(現人口の74%を占める)が前3世紀には上座部仏教をこの島にもたらした。しかし、13世紀より南インドの動乱で、タミル人(現人口の18%)がこの島に多く来るようになり、民族対立が近年にいたるまで、スリランカ内戦の火種となってきた。
1948年の独立後も、タミル人の選挙権を剥奪したり、シンハラ語を公用語として、タミル人を公務員から排除するなど、追い出しが続き、1972年の「スリランカ共和国」成立後、「タミルの虎」による分離独立運動が始まった。
こんな狭い島で、南北インドを起源とする二つの民族が争わなくてもいいのにと思うが、内乱は1983年から2009年まで四半世紀続き、2009年5月のタミル側の敗北でいちおうの終結をみた。1991年には、インドのラジーブ・ガンディー元首相が、シンハラ側の肩を持ち、タミルの虎に暗殺されている。
スリランカの一人当たりGDP(2010年)は、2428ドル(約18万9000円)と世界121位。その後に、モンゴル、フィリピン、ブータンと来る。四半世紀にわたる内戦が経済活動を大きく阻害した。特産はセイロン茶、ルビー、サファイヤなどが採掘される宝石の島でもある。あとは、ココナッツ、ゴム、コメがとれる。輸出品の中心は、繊維・衣料品(輸出の42%)と紅茶(17%)が大多数を占めている。
■内戦終結から2年半、活況を取り戻しつつある観光業
内戦終結から2年半、この島にもようやく平和が戻ってきた。ことに内戦で遠ざかっていたツーリストたちが戻ってきたのだ。2010年は65万人だった観光客が、今年は11月半ばですでに75万人を突破。年間では史上最高の85万人に達しそうな勢いである。
IMG_0108 / Graham Racher
スリランカ観光局は「リフレッシングリー・スリランカ」を謳い、ニューヨーク・タイムズ紙も、2010年5月に「行きたいところ31箇所」のトップにスリランカをあげていた。東北海岸ベンガル湾に面するトリンコマレーのブルー・ホエール見物、東海岸アルガム湾のウインドサーフィンと海洋資源が豊富だ。また、7つもある世界遺産も大きな見所となっている。
lion platform, sigiriya rock / 4Neus
*人気の高い世界遺産、シギリヤ遺跡。
西南海岸沿いに、最大都市コロンボから南の港ゴールまで100kmにわたるモダンなハイウェイも開通した。スリランカのGDPは、2011年8.3%ほど伸び、2012年には9%ほど伸びると見られている。輸出の伸びに、観光の伸びが加わる。2012年3月28~30日には、国をあげた「スリランカ・エキスポ」が計画されている。
タミルの虎は、永久に眠ったのだろうか。
Sigiriya rock (Sri Lanka 2008) / paularps
*当記事はブログ「チェンマイUpdate」の許可を得て転載したものです。