2011年11月29日、
南都週刊は記事「iPhone価格の秘密」を掲載した。
■iPhone4Sの利益分配図=アップルのボロ儲け
*画像は南都週刊の報道。
記事冒頭にある大きなグラフは、iPhone4Sの販売代金に占めるコスト、利益取り分の内訳を示している。上から順に、
アップル社:58.5%
原材料:21.9%
韓国:4.7%
米国:2.4%
欧州:1.8%
中国労働者:1.8%
非中国労働者:3.5%
台湾:0.5%
日本:0.5%
その他:4.4%
となっている。売値の6割はアップル社の利益という計算で、ボロ儲けっぷりが恐ろしい。ディスプレイなど主要パーツを供給している韓国ですら4.7%の分け前しかないというのに。日本製部品は相当数使われているとも言われていたが、南都週刊によると分け前は0.5%しかないようだ。
■中国の「見えない」税金
中国の新聞を読んでいると、「ボーイング1機を輸入するためにはシャツ8億着を輸出しなければならない」というフレーズにたびたび出くわす。労働集約産業中心の中国が生み出す付加価値の低さを嘆き、産業構造をアップグレードしなければと決意する時に使う常套句である。
上記図を見て、お定まりの内容の記事かと思ったが、中身は全然違っていた。この記事が取り上げているのは中国の増値税の問題だ。
増値税とは、商品やサービスの生産、販売にかけられる間接税の一種。製造業の場合は「(売値マイナス卸値)×17%」という方式で計算される(
中国経済情報NAVI)。日本の消費税と違うのは、末端消費者の目に見える形にはなっていないこと。税金を払った意識はゼロでも、中国で買い物すればそれだけ納税していることになる。
外国人に対する払い戻し制度や免税店もないので、私たち日本人も中国でお買い物すれば立派な納税者となる。
■外国のほうが「メイドインチャイナ製品」は安い
問題は輸出した場合には増値税が払い戻されるというシステムにある。17%分の税金付きの価格で中国国内に売るぐらいならば、輸出したほうがまし、というわけで、中国企業を輸出に駆り立てる原動力となっている。
それでも頑張って中国国内でも販売しようとすると、当然、価格は高くなり、「
中国で作ったiPhoneなのに、アメリカで買ったほうが安い!」という現象が生まれてしまう。
中国では「水貨」と呼ばれる個人業者・零細業者による輸入品が大量に流通していたり、「代購」と呼ばれる個人輸入代行業者が盛んだ。日本でも大手家電店のオープンセールには中国人がずらりと行列を作っているのもそのためだが、彼らの商売は増値税があるために成り立っていると言える。それだけの労力と輸送費をかけても、中国で買うよりも安くなることが多いのだ。
内需振興は中国政府のスローガンだが、税制改革をしない限り輸出に特化したほうが有利なのだから。中国では今年から増値税改革が始まったが、その主眼は増値税と営業税という2種類の間接税を1本化することにある(
中国ビジネスヘッドライン)。一応、減税も目的の一つとされているようだが、果たして「海外のほうが中国製品を安く買える」状況が変わるのだろうか。