■クリントン国務長官の歴史的訪問でも応えられないビルマの2つの課題(上)■*当記事はブログ「チェンマイUpdate」の許可を得て転載したものです。
Hillary Clinton / Center for American Progress Action Fund
■クリントン国務長官の歴史的訪問
12月1日(木)~2日(金)の2日間、米国のヒラリー・クリントン国務長官が、米国国務長官としては50年ぶりとなる歴史的なビルマ訪問を行なう。このこと自体が、ビルマの民主開放化を示すニュースになるわけだが、アメリカはそのままビルマ開放路線の宣伝役になるわけではない。
■ミャンマーに残された2つの難題
ここ数ヶ月、ビルマの開放路線は急ピッチで進み、すでに民主化路線に完全に乗ったかのようにも見えるが、必ずしもそうではない。
(1)地方少数民族との闘争
(2)政治犯の釈放問題
これらの大きな問題が残っている。
■新政府とカチン州「KIO」、拭えぬ確執前回お伝えした、地方少数民族軍隊と中央政府との話し合いでは、
最北州カチン州の「KIO」(カチン独立組織)だけが参加していなかった。たまたまの事情かもしれないが、カチン族75万人と中央政府との関係は、ここ数ヶ月むしろ悪化している。
新政府と地方民族軍との密談=半世紀ぶりに帰国した追放の王子―ミャンマー(ucci-h)2011年6月、それまで曲がりなりにも17年間保たれてきたKIOとの停戦が破られた。政府がKIOに対して、カチン軍を政府の国境警備隊に編入させるよう求めたからだ。
カチン族は、イラワジ川上流の丘陵地帯に住み、多くがキリスト教徒となっている山岳民族だ(山の民がキリスト教徒になる等はタイの山岳民族と同じだ)。第2次大戦のビルマ戦線で英米につき、日本軍と闘った勇猛な民兵を持つ。
■ミャンマー国軍兵士による、殺人、レイプなどの人権蹂躙その後数ヶ月、現地に入った人権団体の視察によると、カチン州でのビルマ国軍兵士による民衆への殺人、レイプなどの人権蹂躙、犯罪が著しいということだ。3万人の難民も出ていると言われ、カチン州には民主化改革の片鱗も見られないという。喫緊に住民支援が必要とされている。
もっとも、中央政府も火消しに手をこまねいているわけではない。11月29日(火)にも、KIOの代表ジェームス・ルム・ダオは政府側と話し合ったはずだ。
クリントン国務長官も、「今回の訪問の中で、もっと多くの事実確認が必要」と言っているが、このエスニック(民族)人権問題をどういう形で議題とするかが注目される。ビルマ政府は、そのとき何と答えられるだろうか。
<後編>
クリントン国務長官の歴史的訪問=ミャンマーに残された難題(後編)(ucci-h)関連記事:
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