中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年12月03日
Air France Boeing 747 / ReneS
12月2日付AFP、12月3日付聯合早報を主に参照した。
■事件の展開
11月25日、ボストンに寄航したしたエールフランス・エアバスA340は、検査によって機体防御パネルのねじ30本を付け忘れていたことが発覚。運航を取り止めた。同機は10日まで中国の大手航空機受託整備企業(MRO)・厦門太古飛機工程(Taeco)で分解点検を受けたばかりで、中国メーカーのミスが疑われている。
Taecoは内部調査を実施しているが、エールフランス機の安全には問題がなかったと主張している。しかし、2日、北京を訪れたJuniac CEOは一時、Taecoへの整備委託をとりやめると発言した。同氏によると、例年5~7機がTaecoで整備を受けている。また、同じくTaecoに整備を委託しているルフトハンザドイツ航空も、原因についてTaecoと連絡を取っていることを明かした(中国航空新聞網)。
■日本では分解点検をしていない
記事「エールフランス「中国で整備したらねじがなくなってました」=中国ネット民の反応」で扱った、ねじ脱落事件の続報となる。事態の進展としては、エールフランスの整備委託一時中止があっただけなのだが、航空機業界に無知な私が知らなかったことがいろいろあった。素人がちょろっと調べたことなので勘違いもあるかと思うが、他に日本語ニュースが出ていないので蛮勇をふるって書いておきたい。間違いなどあれば、ご指摘いただければ幸いだ。
まず、エールフランス・A340の分解整備を担当した厦門太古飛機工程(Taeco)だが、1993年に設立された航空機受託整備企業(MRO)企業。香港最大の整備会社Haecoが中心となって設立された。日本からはJALが出資している。
サイト「ビジネス航空推進プロジェクト」の「MRO 航空機受託整備産業」に詳しいが、航空機の整備が外注化が進んでいる。特に日本では分解点検はやっていない。主にシンガポールや中国に委託している。Taecoにしても、日本の国土交通省や米当局による検査、認定を受けており、その技術力は評価されているが、一方で外国に整備を任せることの危険性を指摘する声もある。
(関連リンク:「航空機の整備 海外委託は減らしたい」東京新聞、2008年5月19日)
■ねじ脱落事件の波紋
整備の外注化が進む中で起きた今回のねじ脱落事件だけに、多くの波紋を呼んでいる。一つに中国企業に任してもいいのかという安全面での不安だろう。外資の出資と技術指導により運営されている会社とはいえ、今夏の高速鉄道事故に象徴される「中国安全品質」に抵抗感を覚える人も少なくない。今回の事件でも、Taecoが内部調査中にもかかわらず、「機体の安全に問題はなかった」と放言したことは反発を招いたようだ。
第二の問題は、中国に仕事を奪われた欧州労働者の反発だ。前回の記事でご紹介したように、欧州エアバス労働組合が中国での整備は以前にも問題があったとコメント、批判の先頭に立っている。こうした声に押されて、エールフランスは整備委託の一時中止を決めたようだ。
ちょっとだけ気になるのは日本の反応。JAL機もTaecoでの整備を受けているのだが、さっぱり話題になっていない。「ねじぐらい付け忘れることあるよ、たいした問題じゃないよ」という大人の反応(?)ならいいのだが……。
中国のどうでもいいネタは大々的にとりあげる日本メディア。そのくせ華字メディア、英字メディアではそこそこ取り上げられている今回のニュース(まあこの件が大きい問題なのかどうかはよくわからないが……)がさっぱり報じられていないのは、ちょっと問題なのではないか。