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2011年12月04日
Royal couple / xtremepeaks
2011年11月、新婚間もない美男・美女の国王夫妻が、「幸せの国」ブータンより日本、タイを訪れた。日本の都道府県で人口46位の島根県(72万人)ほどの人口しかしいない、70万人の小国ブータン。その国が提唱し始めた「GNH」(国民総幸福量)は、世界中に知られるようになり、昨今では先進国からも大きな関心を寄せられている。しかし、経済面ではどうなのだろう?
happy faces from bhutan / laihiu
■GDPとGNH(国民総幸福量)
ブータンの経済面での充実は、GNHと対立するものではなく、GDPの成長はGNHの大事な一部分と言われている。当然だろう。問題は、文化、環境面の保護は規制すればできることだが、経済成長はそれなりの戦術・戦略がいる。すぐに軌道に乗せることは出来ないということだ。
ブータンの一人当たりGDPは、2010年で世界124位の2069ドル(約16万1000円)。モンゴルやフィリピンに次ぐ位置にある。タイ(一人当たり4992ドル(約39万円))の4割ほどの水準である。しかし、昨年も11.7%の経済成長を果たしており、GDPの水準自体がどうこうということではない。
■解消されない貧富の差
問題は、ここ数年、貧富の差が解消されていないことだ。国民の4分の1は、なお1日70セント(約55円)以下で暮らしているという。月間21ドル(約1640円)、年間255ドル(1万9900円)では、いかにもきついだろう。いまだ基本的な貧困問題が解決されていない。
地方と都市の差が著しく、この1日70セント(約55円)という貧困ラインを下回る層は、都市では2%まで下がってきたが、田舎ではなお30%に達するという。政府のGNH委員会の目標は、貧困率を、現在の23%から15%に下げることである。地方での道路や灌漑設備の建設が重要だが、なかなか進まないようだ。一方で、役人の汚職は、増加傾向にあるという。
Bhutan / Radio Nederland Wereldomroep
■インドとの密接な関係、入国者数制限
テレビは、国の1つのチャンネルに対して、インドからの放送が12もあるそうだ。経済的にインドにおんぶに抱っこの国だが(水力発電の輸出、労働力の移入、経済援助)、文化的にもインドに席捲されそうだ。
観光も大きな資源だが、環境を保護するとの建前から、入国者数が制限される政策を取っており、経済への貢献度もいまいちだ。
経済発展は、自由な市場から生まれる。幸福の国ブータンも、規制ばかりでなく、経済面でのポテンシャルをもっと生かせば、貧困からの脱却をはかれるだろうと思うが、どうなのだろう?
Bhutan / Radio Nederland Wereldomroep
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関連リンク:
“幸福の国”ブータンが抱える深刻な問題(トピックニュース)(livedoor ニュース、2011年11月22日)
*当記事はブログ「チェンマイUpdate」の許可を得て転載したものです。